松原JCTの完成時の線形を◆模式図5に示した。近畿自動車道から阪神高速
道路 へのランプは、前項で記した通りである。逆に阪神高速道路から近畿自動
車道への左 折方向のランプはユニークな線形になる。単純に左へカーブするの
ではなく、右に カーブして270度螺旋状のランプを経て近畿自動車道本線に
合流する。螺旋区間で は、供用中の阪和自動車道から西名阪自動車道への螺旋
区間と2箇所で交差する。最 初の交差はオーバークロスで、2回目の交差はア
ンダークロスになる。
螺旋区間は交 通容量が低下するため渋滞ネックになることがあるが、果たし
て大丈夫だろうか。大 和川に5本目の橋を架けるくらいの大胆な計画変更でシ
ンプルな接続をした方が良い と思う。また、供用中の阪和自動車道からの螺旋
区間はすでに渋滞ネックになってい るので、これも直結路に変更した方がなお
良いと思う。ただし、このランプは右折方 向になるため、立体交差構造物をさ
らに追加しなければならない。
ジャンクション敷 地内にはすでに構造物が通過できる空間が見あたらないの
で、新たな道路用地を確保 する規模の大きいプロジェクトになってしまう。ま
ずは、螺旋区間の拡幅を施して低 速車と高速車でレーンを分けられるようにす
ればある程度回避できる。この手法は東 京外環自動車道から関越自動車道への
大泉JCTランプの螺旋区間で施工されている。
都市部のインターチェンジ、ジャンクションの線形改良は主に道路用地に制限
があ るためユニークな手法が実施される。俯瞰で複雑に感じる線形は、間近で
は想像以上 に複雑な構造物が乱雑に林立している。施工前に計画されていない
クリアランスをジ ャンクション下部に新たに確保することは極めて難しい。松
原JCTのように土工区 間と構造物が複合するケースではその傾向がさらに強
くなる。
施工前は広大な敷地に見えていても巨大な道路構造物が完成してみると案外狭
く感じ るものである。ところが、建築物では逆に広く感じることがある。更地
のときは狭く 感じたが、建物が完成してみると案外広いオープンスペースを持
ち、建物の内部も決 して窮屈ではない。採光確保などで道路構造物では実現で
きない素材で構成されてい るせいもあるが、機能よりもデザインを重視した努
力のたまものとも言える。
少なく とも道路よりは機能とデザインのバランスではデザインを重視してい
るだろう。建築 物は万人が常時利用できるとは限らないので、厳密には社会資
本とは言えないが、都 市景観の一つには違いない。当方は以前から道路構造物
が都市景観そのものであるこ とに着目している。首都高速は東京の景観そのも
のである。ところが道路は空気のよ うなもので、道路単体に強い関心をもつ人
は少ない。単に利用するだけ、通過するだ けである。
松原JCTは西名阪自動車道、阪和自動車道から大阪市内方面に向かう場 合
には必ず通過するキーポイントである。大阪の入口を示すランドマークである。
ま た、大阪の入口(ゲート)そのものである。今後、高速道路は新規建設の時
代から運 用の時代へ移り変わる。ジャンクションをシティゲートとして見直し
て、道路を通じ てこれから侵入する都市の個性を感じることができるようにす
れば、これまで通過し ていただけの区間にも関心を持つ機会になるかもしれない。
旅行者の多くは点に向かうものと決めつけて、バブルのころは魅力的な点を作
ること に社会資本を投入してきたような気がする。誰も利用しなくなった箱物
が放置されて いるのは、それが必ずしも正しくないことを表しているのではな
いだろうか。線を楽 しむ旅行者も案外多いような気がする。東京から房総半島
に行くとき、採算がとれな いことで揶揄対象にされているアクアラインは、東
京湾のランドマークにはなるはず である。アクアラインは投資が大きすぎる
が、それでも線を楽しむ良い機会である。 六本木のランドマークとして、六本
木ヒルズではなく谷町JCTを選択するのは当方 だけではないと信じる。
|