ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

アトランタ・名古屋・ニュージャージー13


◆地図NJ4
ニュージャージーターンパイクの方向別併走区間におけるサービスエリアの地
図。内 外いずれの本線からもサービスエリアが利用できるようになっている。
 国内には、このようなかたちの既存高速道路の有効化が可能な区間は想定しに
くいが、新たに別線を新設するよりは建設費用は抑えられる。また交通需要も予
測しやすい。さらに交通需要に応じてフレキシブルな追加が可能である。部分開
通でも効果を発揮するのだ。第二東名は全線開通しなければ効果を発揮しない
が、現東名の拡幅な らば混雑起因区間だけを拡幅すればすぐに効果を発揮する
はずである。
 複線化もある程度は参考になるのではないだろうか。


【最後に】

 なぜ、コンコルドは就航しなくなったのか。高い料金設定のせいだろうか。そ
んな単純なことではないと思う。最速旅客機の需要が多いならば、安価な設定も
可能になるだろう。長い滑走路が必要なため、ルート設定が制限された。機内が
狭くて乗り心地が悪い。大量の燃料を消費し、オゾン層に穴をあけるなど地球に
やさしくないという考えもあるだろう。しかし、東海道新幹線でも開通当時は特
急列車に安易に乗車できる時代ではなかったし、前代未聞の建設費は果たして償
却できるのだろうかと危惧する声が多かった。それなのに開通してまもなくドル
箱路線になった。これは需要が あったから帰結したことである。

 所要時間、乗車料金、ダイヤ密度、駅へのアクセ ス、乗り心地などいろいろ
な因子が絡み合い莫大な需要を生んだのである。どれか一つでも欠けていれば
「(乗車するかどうかの)迷い」が発生する。たとえば、横浜と上野の間で新幹
線を利用する人は果たしているのだろうか。逆に、横浜と京都の間で新幹線を敬
遠する人は果たしているのだろうか。もし、横浜と上野の間で利用者が極めて多
いならば、リーズナブルな料金設定にして、サイクルの異なる区間を直通できる
列車の開発もするだろう。しかし、そんな需要はおそらく永遠に発生しないと思
う。

 社会資本は、あくまでも需要に応じて整備すべきである。鉄道に比べて道路は
多様な需要に応えなければいけないので簡単ではないが、きめ細かい分析をして
確度の高い需要予測をしなければならない。整備された社会資本に需要が追随を
強いられる状況は避けるべきである。首都高速、名神高速道路の開通当初は自動
車も少なかった し、さらに有料道路に慣れていなかった。そのため交通量は多
くなかった。

 ところ が、ほどなく需要が供給を上回る時代に移行していった。社会資本の
整備が先行して、需要を生み出した。社会資本が煽動したのである。これは、社
会資本に需要が追随したことになるのだろうか。高度成長黎明期の大きな賭だっ
たが、これには見込みがあったのだ。欧米ではすでに20年前に到達していたス
テージに日本が追随したのだ。欧米で需要を生んだ実績を真似ただけなのだ。賭
には違いないが、成功の確度が 高い賭である。

 さて、欧米では1970年代以降は高速道路における大プロジェクトはあまり
実施されていない。完備したから止めたのではない。これ以上の需要は見込めな
いと踏んだのである。高速道路の整備はこのくらいで十分と判断したのだ。高速
道路の整備は、日本においては1990年くらいが、欧米の現状に近いと考えて
いる。距離ではアメリカがはるかに長いが、国土が大きいので比較にならない。
整備率ではドイツには及ばないが、ドイツの道路は一般道路でも高い制限速度に
設定しているので、これらも高速道路に含まれている。日本と同じようなかたち
の高速道路整備率はあまり変 わらないのだ。

 つまり、1990年以降の高速道路整備は前人未踏ということであ る。国費
を投じる勝算のない賭は止めた方が良いと思う。欧米のように、整備ではなく運
用にこだわるべく方針転換する方が無難だろう。道路に関しては、欧米とは異な
るという考えもしない方が良いだろう。これまで欧米の歴史に20年遅れで追随
してきた。日本が欧米と異なる進化を遂げたことはなかったのだ。先輩のたどっ
た道をよ く分析して、予測できない迷い道に入り込まないようにしてほしい。

 中国では、1987年から15年間で25000キロの高速道路を建設した。
そして、2004年には30000キロに達した。短期間に日本の高速道路総延
長の4倍に達したのだ。インフラ整備において、欧米との40年の遅れを一気に
取り戻そうとしているのだろうか。高度成長期黎明期に賭はつきものだが、いか
にもリスクが大きい。2004年11月現在、大都市近郊区間以外ではほとんど
需要はないが、果たして大丈夫だろうか。前人未踏の挑戦である。確かに自動車
の普及率が欧米や日本と同じになれば6億台が国土を走り回る。そんな膨大なリ
ンクはどの国も経験したことは ない。道路において、中国は独自の進化を遂げ
そうだ。

===2005年2月2日脱稿===