ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

日本〜フランス・ジャンクション比較20



【あとがき】

 今回、フランス語の地名、路線名の表記をどのようにするのか迷った。英語の
場合 は何とか発音に近いカタカナでの表記をすることができるが、フランス語
は無声音が 多く発音が難しい。最初は、そのままフランス語の綴りで記してし
まおうと考えた。 しかし、これでは読みにくい。手元の資料は地図がフランス
語、ミシュランのガイド ブックは英語である。

 思い切って、仏和辞典を調べて当方が理解した発音をカタカナで記してみた。
本当 の発音や、市販の国産のガイドブックに記された地名とは異なる表記があ
るかもしれ ないがご容赦願いたい。また、日本語で通っている名称(凱旋門:
プラス・シャル ル、コンコルド広場:オベリスク・コンコルド ほか)は日本
語で表記した。「通 り」はアベニュー、ブルバールといくつかの区分がある
が、これらを忠実に記すと 「ド」「ラ」「デ」も正確に表記しなければ違和感
がある。

 そのため「通り」と表記 した。(グランダルメ通り:アベニュー・ド・ラ・
グランダルメ、シャンゼリゼ通り :アベニュー・デ・シャンゼリゼ、ラミラー
ル・ブリュイクス通り:ブルバール・ ド・ラミラール・ブリュイクス ほか)

 もう一つ気になったことがある。フランスの地理について、一般的にはどのく
らい 理解されているのだろうかという点である。歴史や鉄道に関わる地名なら
ばある程度 メジャーだが、道路に関わる地名は国内でも結構マイナーである。
関東の人には、鶴 ヶ島、久喜、大栄と、圏央道と放射高速道路との結節点を記
しても理解してもらえる が、福重、野芥、野多目は理解できるだろうか。

 福岡外環状(福岡高速5号)の経過 点である。パリの放射高速道路の向かう
主な地名は、コンピエーニュ(A1)、シャ トーチェリー(A4)、フォンテ
ンブロー(A6)、オルレアン(A10)、ベルネ (A13)である。これら
は、鶴ヶ島、久喜、大栄のような存在である。しかも、当 方が辞書を見て理解
した発音のカタカナ表記である。さらに遠いメジャーな地名を記 した方が親切
である。新潟、仙台、潮来である。すると、先述の地名は、アントワー プ
(A1)、ストラスブール(A4)、マルセイユ(A6)、ボルドー
(A10)、 ルーアン(A13)になる。A10から分岐するA11のルマン
を記しても親切である。

 しかし、パリのミクロな道路の説明に、このような遠方の地名を記すのは違和
感が ある。北九州高速5号線の説明で、東京、鹿児島、釜山というような地名
が登場すれ ばまともな報告とは思わないだろう。本報告は観光ガイドではない
ので、雰囲気だけ を察していただくという意味で、マイナーな地名をそのまま
表記することにした。

 こ のあたりもご容赦願いたい。機会があれば、パリ市全域やフランス全土の
高速道路に ついて巨視的に説明したいと思う。でも、これは観光地図そのもの
になってしまう。 道路に拘泥する無粋な当方の出番ではないかもしれない。実
は、当方が読めない外国 語の資料を無理に読んでいるのは、残念ながら満足さ
せてくれる国産の資料がないか らである。情報が古いものや、調査が甘いもの
が多い。クレームをつけることができ る人が少ないせいだろう。困ったものだ。

 最後に、◆模式図2にフランスの高速道路網を添付する。主にパリから放射状
に伸 びる路線である。路線番号はヨーロッパ共通の番号である。フランスの路
線番号は、 パリ市付近では次の路線番号が一致する。A1とE15および
E19、A4とE5 0、A6とE15、A10とE5、A11とE50、
A13とE5である。

◆模式図2 フランスの高速道路網(概要)
 なお、路線番号は、主要区間のもので図示された全区間が適用されるわけでは
な い。西フランスの路線番号はいびつに切り替わる。フランスの高速道路網は
パリ中心 に放射状に整備され、真北を1として時計回りにナンバリングされて
いる。ところ が、ヨーロッパのナンバリングはフランスを含むヨーロッパ全域
を格子状にナンバリ ングしている。

 これはアメリカと同じである。格子に並走する区間は問題ないが、斜 めに横
切る路線はヨーロッパの路線番号が途中で切り替わるのだ。A11はルマンま
ではE50の緯度にあたるが、終点のナントではE60の緯度にあたる。そのた
め途 中のアンジュで路線番号が変わる。E60はヨーロッパ高速道路網の理想
としては東 に延びて、ツールでE5と交差し、オルレアンから東に延びて、ド
イツに向かう。そ んな道路は実在しないので、既存の一般道路や高速道路を無
理やり同じ路線番号にナ ンバリングしているのだ。E60は、ツールとオルレ
アンの間はE5との重複区間、 オーセルとジージョンの間はE15との重複区
間を設定している。

 E50とE60の関係と、マルセイユを通過する地中海沿岸区間がE80とい
うこ とから、E70の存在する緯度が理解できると思う。南北方向の路線は、
東西路線と 直交するE5の位置から想像できるだろう。アメリカでは東西方向
が南からI10、 I20、I30、南北方向が西からI5、I15、I25と
ナンバリングされてい る。考え方は同じだが、少し異なるところにヨーロッパ
の意地を感じる。このあたり のユニークなナンバリングについては、ヨーロッ
パ高速道路網の概要を記す機会があ れば、改めて触れたいと思う。

 日本でもいずれはアジア全域の一部としてアジアのナンバリングが適用される
だろ う。このときは、東西方向については北から、釧路と小樽の間(道東道、
道央道、札 樽道)、いわきと金沢の間(磐越道、北陸道)、東京と下関の間
(中央道(名神高速 を含む)、中国道)、そして徳島と長崎の間(高松道、松
山道、大分道、長崎道)が 1つの路線として括られるのだろうか。松山道と大
分道の間は海を隔てているが、ア ジアというマクロな視点で見れば分割する必
要はないだろう。ただし、この機会に豊 予海峡に橋を架けるプロジェクトが始
動しないようにしてもらいたい。いかなる社会 状況の変化を予測しても、費用
対効果が良好にはならないと思うから。