ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

本四連絡橋のルート選択2



【ルート説明】
 名古屋ICと四国各地のターミナルを結ぶルートは、3本の本四ルートのほか
にも 各地で複数のルートが選択できる。まず、名古屋ICで東名、名神ルート
(名神ルー ト)をたどるか、東名阪、名阪国道、西名阪ルート(名阪ルート)
をたどるかという 大きな選択肢に迫られる。関西に入ると、さらにルートは複
雑に交錯する。(◆地図 1を参照。)

◆地図1
名古屋ICから松山ICへの選択ルート図。
 名神ルートと名阪ルートの比較については、◆地図1でも明確なので詳細を省
略す る。この地図ではわかりにくい複数ルートについて、ゾーンごとに詳細を
記す。名神 ルートの「(1)京都ゾーン」、名阪ルートの「(2)大阪ゾー
ン」、主として明石 海峡ルートに関わる「(3)神戸ゾーン」、そして3本の
本四ルートの「(4)本四 ゾーン」に分割した。


(1)京都ゾーン
 名神ルートを西進すると栗東ICから6車線に拡幅される。交通量も増大し、
大都 市の接近を予感させる。栗東ICと中国自動車道が分岐する吹田JCTま
では、かつ ては渋滞多発区間だった。この渋滞は深刻で、特に京都南ICと茨
木ICの間の天王 山TN(トンネル)をネックとする上下線の渋滞は慢性的
だった。そのため、この区 間の拡幅が企図された。これは、東名高速道路の厚
木ICと御殿場ICの間と同様の 措置であるが、ユニークなのは京都市内の回
避区間である。既存の名神高速道路を拡 幅するのではなく、既存の一般有料道
路(自動車専用道路)の京滋BP(バイパス) を利用する分散型で総体として
の拡幅を実現させている。

 京滋BPは国道1号で厳密には高速道路ではないが、高規格で名神高速道路を
十分 補間することができる。名神高速道路の瀬田東JCTで分岐して、大山崎
JCTで名 神高速道路に戻る。大山崎JCTは名神高速道路の各方向と接続す
るフルジャンクシ ョンだが、瀬田東JCTは栗東方向のみの片方向連絡のジャ
ンクションなので注意が 必要である。

◆地図2
京都ゾーンの選択ルート図。
 京滋BPの全区間(京滋ルート)を通過だけに利用する場合は、途中に料金所
はな く、名神高速道路を直通する場合(名神ルート)と同様にノンストップで
通過できる。

 距離の差異は、京滋ルートが0.1キロ短い。所要時間は7分少ない。100
メー トルで7分は差異が大きいような気がする。このデータは日本道路公団
WEBサイト の「ハイウエイナビゲータ」で10月の平日の午前10時ころの
データを流用してい る。制限速度から単純に算出したものではない。名神ルー
トは交通量が多く、制限速 度では走行できないということである。実走してみ
ると、確かに渋滞気味で走行速度 は80キロ未満であることが多い。しかし、
早朝や深夜、休日最終日の午前など、交 通量の少ない時間帯では名神ルートの
方が3分ほど早いことがある。名神高速道路を 栗東方面から走行すると瀬田東
JCTの分岐手前で、各ルートの所要時間が表示され ている。(◆写真1ー1を
参照。)

◆写真1ー1
名神高速道路下り線、瀬田東JCTの2キロ手前のオーバーヘッド式案内板。
名神ルートと京滋ルートの各ルートにおける所要時間を表示している。この所要
時間 は5分きざみなので、45分というのは41分から45分の間ということ
である。
(2003年8月23日、著者撮影。)
 この表示板の所要時間は5分単位なので、5分以内の微妙な差異は表現できな
い。 名神ルートの方が3分早いというのはほとんど誤差であるが、おおむね制
限速度と道 路規格が同じで、距離が100メートルしか差異がなければ、ス
ムースならば3分の 差異も大きいくらいである。

 ところで、京滋ルートが名神ルートに比べて100メートル短いというのは、
あく までも高速道路本線の距離である。ジャンクション内の導入路は含まれて
いない。お おむね導入路(アプローチランプ)はそれほど長いものではないの
で、総所要時間を 語るときに配慮しなくても良い。下り線の瀬田東JCTは単
純な分岐で、名神高速道 路本線から京滋BP本線への移行は数秒である。上り
線はループ区間を経るので時間 はかかるが、渋滞や低速の大型特殊車両に阻ま
れなければ1分はかからない。

◆写真1
大山崎IC、JCT
手前左右方向が名神高速道路、ジャンクションを経て奥方向が京滋BPである。
(高速道路調査会発行「高速道路と自動車」2003年9月会報から引用。)
◆写真1は大山崎JCTの俯瞰写真である。世界でも珍しい複雑な線形である。
名神 高速道路各方向と京滋BPを連絡するだけでなく、将来は京滋BPの延長
として京都 縦貫自動車道が接続する。全4方向に連絡するフルジャンクション
である。さらに、 名神高速道路と並行する一般国道171号への大山崎ICを
併設している。もちろ ん、大山崎ICは、接続するすべての高速道路の全方向
と連絡している。

 つまり、国道171号を含めて6方向のフル接続である。しかも、交通需要の
多い 京滋BPと名神高速道路の茨木方向との間には短絡ランプを設置しており
2ルートが 選択できる。この選択はあくまでもルート選択を間違った場合でも
リカバリーできる ということだが、ジャンクションの線形を徒に複雑化させて
いる。

 大山崎JCTのランプは基本的には1車線で、大胆な横断曲線を基調にしてい
るた めカーブが多い。また、◆写真1は俯瞰なのでわかりにくいが、国道171
号と並行 している鉄道高架線は東海道新幹線である。高架の高規格鉄道のオー
バークロス箇所 はかなりの高所を通過している。つまり、各ランプの縦断曲線
も単調ではなく山あり 谷ありなのだ。しかも、各ランプが左右から合流、分流
を繰り返す。とても高速で走 行できるような構造ではないのだ。閑散時間帯に
100メートル短いにも関わらず、 名神直通ルートの方が若干早いのは、まさ
にこの線形のせいだと考えられる。

 京都ゾーンの交通量は多く、京滋BPが全通してもまだ需要に十分なインフラ
が整 備されているとは言えない。走行時間帯による差異が大きいので、所要時
間をズバリ 言い切るのは困難である。本報告では本四間の長距離における分析
なので、乱暴だが 便宜上、京滋BPの方が7分短縮できるというデータを適用
する。

続く