ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

阪神高速・第二環状線11



 俯瞰(◆写真7)や平面地図(◆地図1)を見ると、近畿自動車道と阪神高速松原 
線の亘り線は容易に追加できそうに見えるが、このルートは鋭角状の線形であるため 
ユニークな亘り線が計画されている。

 近畿自動車道から松原線への第二環状線外回りにあたる亘り線は、ジャンクション 
の南側に大きく湾曲させた直結路で結ぶ。今回提示した添付資料ではわかりにくい 
が、既存の阪和自動車道から松原線への亘り線はかなり高い位置までせり上がってい 
る。ジャンクションでの左折方向はシンプルで平面的な構造で十分だが、この亘り線 
は西名阪自動車道本線をオーバークロスできる高さに設置されている。

 これは、近畿 
自動車道から松原線への亘り線が、西名阪自動車道をオーバークロスしてそのままの 
高さで合流できるようになっているのだ。ただし、この亘り線の始まりである近畿自 
動車道の分岐部は、西名阪自動車道への亘り線が占有しているので、まずこの亘り線 
を外側にずらしてランプ用地を確保しなければならない。盛り土の斜面を切り立たせ 
て西名阪自動車道への亘り線を新設することになるだろう。

 反対に松原線から近畿自動車道への亘り線はループ状のユニークな線形になる。先 
述のように左折方向はシンプルな線形になるはずだが、これは直結路にすると鋭角状 
の亘り線になるせいである。また、このまま直結させると大和川橋梁上に西名阪自動 
車道、松原線の双方が近畿自動車道に合流するため、合流車線を確保しなければなら 
ない。しかし、大阪中央環状線が近接しているためこれ以上拡幅できない。そのた 
め、大和川橋梁の手前に合流車線を設置しておきたい。

 既存の松原線から阪和自動車道への亘り線の途中で右側に分岐して、やはり既存の 
阪和自動車道から西名阪自動車道へのループ状の亘り線に絡み合い、この亘り線をく 
ぐって西名阪自動車道から近畿自動車道への亘り線に合流する。ループランプの絡み 
合いは、先述の東大阪JCTでも見られる。近畿自動車道南行きから阪神高速東大阪 
線への亘り線と、東大阪線西行きの出口ランプが空中で絡み合う。(◆航空写真7を 
参照。)
 阪和自動車道から西名阪自動車道への亘り線はすべて盛り土構造なので、新たに亘 
り線をくぐらせる空間を確保しなければならない。

 ところで、当方はこの機会に松原JCTの線形を見直した方が良いと考えている。 
現時点で唯一のループ線形である阪和自動車道から西名阪自動車道への亘り線は交通 
容量が低下して、渋滞の原因になっているのだ。このループは上り坂なので、大型車 
は減速が強いられる。全ランプを直結路にすれば、さらにスムースな走行が可能にな 
るはずである。このような改良は欧米では珍しくないが、国内では九州自動車道の鳥 
栖JCTや、第三京浜道路と横浜新道の直結路など数少ない。今後は道路を新設する 
のではなく、うまく利用するフェーズになっていく。ジャンクションの線形改良は案 
外効果が大きいので、各地で実施してもらいたい。

 最後に、松原JCTの成立経緯を簡単に記す。西名阪自動車道が松原まで開通した 
のは1973年4月1日である。次に阪神高速松原線が1979年3月1日に直通す 
るようになった。そして、1988年3月17日に近畿自動車道、1989年3月2 
9日に阪和自動車道が接続した。

 西名阪自動車道が開通したとき、松原JCTはほぼ現在の線形のまま、松原ICと 
して大阪中央環状線の堺、八尾の双方向と連絡していた。阪神高速松原線が直通する 
ようになっても松原ICはそのままのかたちである。近畿自動車道が接続することに 
なり、八尾方面の出入口は近畿自動車道本線に直通するようにして、八尾方面への出 
入りには近畿自動車道の長原ICを利用することになった。

 西名阪自動車道利用の場 
合は、長原ICまでの近畿自動車道の料金は不要である。そして、阪和自動車道が接 
続したときも、近畿自動車道と同じ制御で、堺方面の出入口は阪和自動車道本線に直 
通するようにして、堺方面への出入りには阪和自動車道の松原ICを利用することに 
なった。この間の通行料金はもちろん不要である。

 ここで、気になることがある。近畿自動車道の松原JCTと長原ICの間は無料 
で、阪和自動車道の松原JCTと松原ICの間も無料ということは、長原ICと松原 
ICの間は無料なのだろうか。

 正解は、「建前」は有料、「本音」は無料である。JHのWEBサイト「ハイウエ 
イナビゲータ」でこの区間の料金を検索すると、400円(1.8キロ)と表示され 
る。現地を走行すると確かに料金所は存在しているが無人である。特に走行を妨げる 
バリケードはなく、注意して見ると、西名阪自動車道利用車以外は通行料金を支払う 
旨の説明板がある。しかし、料金収受施設は釣り銭も出ないし、ハイウエイカード、 
クレジットカードも使用できない。もちろんETCもない。単に賽銭箱のようなもの 
が設置してあるだけである。JHの粋な計らい※だと思うが、事情を知らずに律儀に 
料金所で停車すると追突される可能性がある。地元の人は(地元ではないが当方も) 
減速する気はさらさらないのだ。

 松原JCTの経緯はとてもユニークなので、概要だけでなく機会を得て単独でまと 
めたいと考えている。大和川橋梁(明治橋)の運用は、新大宮BPの笹目橋のよう 
に、一般道路と高速道路が取り合いをしたことがあるのだ。

※粋な計らい
 有料の自動車専用道路の特定区間利用ケースを無料にしているほかの区間を下記に 
記す。
 ・阪神高速5号湾岸線の名谷JCTと垂水JCTの間
 ・阪神高速7号北神戸線の伊川谷JCTと永井谷JCTの間
 ・第二神明道路の伊川谷JCTと玉津ICの間

続く