ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

東名高速VS中央高速 11



 当方は、第二東名高速道路の建設に反対しているのではない。むしろ賛成である。 
東名高速道路は全通から30年を経ている。耐用年数は理論上70年残しているが、 
これは設計交通量での見込みである。開通当初から限界交通量を担ってきたので、寿 
命は縮まっていると思われる。つまり、東名高速道路とのハイブリッドでの運用では 
なく、取替えを見越した賛成である。

 欧米、特にアメリカは30年ほど前から高速道路の新規開通はほとんどない。保守 
も行き届いていないので、古い開通区間や重交通区間、海岸区間から順次崩壊してい 
る。日本の道路事情はアメリカに30年遅れて同じ経緯をたどっている。現時点で、 
取替えを見越したプロジェクトが実施されることは決して無駄な公共投資とは思えない。

 問題なのは、第二東名高速道路が全通して機能を発揮するまで、東名高速道路が耐 
えられないということである。経済事情により、この10年の交通量は変わらない 
が、この交通量はすでに設計交通量を上回っている。インフラへの負担は継続してい 
るのである。寿命は着実に縮まっているはずである。高い通行料金によりリフレッシ 
ュ工事は定期的に実施されているが、土台までは取り替えられない。

 何らかのかたちで、東名ルートの延命を考えなければならない。
 これは、東名ルートの交通量を少しでも減らすということである。つまり、中央 
ルートへの迂回促進である。距離は変わらない。料金もいずれ同じになる。カーブや 
坂道は多いが、交通集中の確率が低いので平日昼間ならば所要時間も変わらない。こ 
の事実をアピールすればそれなりに迂回は促進されるだろう。

 インフラとしては、小牧JCTでの分岐で、東京までの所要時間を表示すれば効果 
的だと思う。複数ルートが選択できる箇所では、このような情報を提供しているケー 
スがある。宮野木JCTでの湾岸ルートと京葉ルートなど長くても30キロ程度の区 
間である。350キロに及ぶ区間で、このような広域情報を提供するのは画期的では 
ないだろうか。

 また、奇抜なアイデアとしては、道路名称の変更もおもしろいと思う。東名高速道 
路を静岡自動車道に変えてしまうのである。名神高速方面からの小牧JCT分岐で 
は、多治見、松本、東京方面は中央自動車道を、春日井、名古屋、静岡、横浜方面は 
静岡自動車道を案内する。静岡自動車道でも東京には行けるので、「横浜(東京)」 
と表示する。

 このとき名神高速道路の名称を元来の中央自動車道に変えて、高井戸ICから西宮
ICまでを中央自動車道にすれば、このルートが関東と関西を連絡するメインルート
のように思える。東名高速道路は静岡に立ち寄る補助ルートのような気になるのでは
ないだろうか。

 さらに、小牧JCTの線形を変更して、中央自動車道を道なりにすればスムースな 
誘導ができるだろう。(◆模式図5)

◆模式図5
小牧JCTの線形変更、および中央ルートの道なり化私案。
 後半はやや脱線したが、中央ルートが東名ルートと通行料金において互角になれ 
ば、いろいろな可能性が考えられるということである。少なくとも東海道新幹線のよ 
うに代替機能が全く考えられないインフラではない。2ルートが選択できるシステム 
は1ルートだけのケースの2倍以上の効果を発揮するものである。

 東海道線において、1958年11月にビジネス特急こだま号が運行されるように 
なった。東京と大阪を6時間50分(これまでの最速は7時間30分)で結ぶ。ス 
ピードだけでなく内装も豪華で全車両が2重ガラスの冷暖房完備の電車である。当時 
は窓の開かない車両や長距離を走る電車はとても珍しい。つまり、車両もダイヤもす 
べて一新されたのである。

 ところで、1964年10月には東海道新幹線が開通した。わずか6年で東海道の 
主役を譲ったことになる。東海道新幹線の工事は突貫工事で極めて工期は短かった 
が、それでも1958年にはすでに建設は決定していた。決定していたにもかかわら 
ず、当時パンク状態の東海道線に新機軸を打ち出した。考え方によっては無駄な投資 
かもしれない。ほかの交通需要の少ない区間ならばこのような批判は必至だと思う。 
しかし、東海道筋はわずか6年でも現状には耐えられなかったのである。

 第二東名高速道路の全通は、2003年の時点では目処が立っていない。神奈川か 
ら愛知までに限っても最速で10年以上先だろう。東名ルートと中央ルートをハイブ 
リッドに活用する思い切った対策が実施されることを望む。