ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

伊勢湾岸11



【まとめ】
 各年度の開通ごとに新ルートの料金設定を検討したが、最有力な想定ではほとんど 
現状と変わらないことがわかった。(◆表6)

◆表6
伊勢湾岸自動車道、第二名神高速道路開通による新ルートの通行料金一覧
 伊勢湾岸自動車道の全通により、東名高速道路の豊田JCTと東名阪自動車道の四 
日市JCTの間に20.9キロ短縮する新ルートが成立するが、通行料金は50円高 
くなる。料金算定は50円単位への丸め込みで誤差が生じるので、この設定では通行 
料金は変わらないと考えられる。

 第二名神高速道路の亀山東JCTと名神高速道路の草津JCTの間の開通により、 
東名高速道路の豊田JCTとの間に34.2キロ短縮するルートが成立して、通行料 
金は150円安くなる。50円の誤差を考慮しても100円程度は安くなるはずであ 
る。ただし、◆表4にも記載していないが、大津JCTと草津JCTの間3.6キロ 
が大都市近郊区間に指定されれば、この100円は消えてしまう。いずれにしても、 
34.2キロの短縮は普通区間ならば800円分にあたる。たとえ100円安くなっ 
ても、実はあまり納得できる通行料金ではない。

 第二名神高速道路の大津JCTと高槻JCTの間の開通により、東名高速道路の豊 
田JCTとの間に35.2キロ短縮する新ルートが成立するが、通行料金は現状のま 
まである。

 どの開通においても、同じ料金になってしまうのは果たして偶然だろうか。名港ト 
リトンが一般有料道路の別料金を加算する仕組みがキーになっているが、あまりにも 
よくできた料金設定システムである。

◆表7
伊勢湾岸自動車道、第二名神高速道路の開通経緯に伴う時短効果一覧。

 距離が短縮されても通行料金は変わらないが、当然通行時間は短縮される。いずれ 
の新規開通区間も高規格道路なので走行速度が向上するので、その効果は優れてい 
る。(◆表7)
 伊勢湾岸自動車道の全通により、豊田JCTと四日市JCTの間は、66分から3 
9分に41%短縮される。
 第二名神高速道路の草津JCTまでの開通では、豊田JCTから草津JCTの間 
は、130分から88分に32%短縮される。また、四日市JCTと亀山JCTの間 
が開通すると0.8キロ距離は長くなるが、高規格なので時間はさらに3分短縮される。
 第二名神高速道路の高槻JCTまでの開通では、豊田JCTから高槻第二JCTの 
間は、162分から115分に29%短縮される。また、第二名神高速道路の全通 
で、さらに3分短縮される。

 この時短は画期的である。時短効果は、短縮時間に時間給料と交通量を掛けて求め 
るが、交通量が多いので極めて大きな金額になる。名神高速道路の交通がすべてシフ 
トするとは思えないが、例えば東京から大阪まで直通するとき、50分短縮できる第 
二名神高速道路経由を豊田JCTで迷うだろうか。少なくとも通行料金が同じならば 
迷う理由はないと思う。

 第二東名高速道路は、ほぼ東名高速道路と並行するので、距離の短縮はほとんどな 
い。道路の規格が高いため走行速度の向上で時短効果が期待できる。ところが、第二 
名神高速道路は距離も短縮されるので、さらに効果は大きい。

(第二東名高速道路も第二名神高速道路も120キロで走行できる規格だが、果たし 
て制限速度は120キロに設定されるのだろうか。もし、過剰な安全措置のため10 
0キロに制限されたら第二東名高速道路は効果を発揮できない。なお、第二名神高速 
道路は6車線のフル規格ではなく、ほぼ全線で4車線の暫定規格で施工している。し 
たがって、本報告の所要時間の計算でも100キロ走行を想定した。それでも、上記 
のように大きな効果をもたらしている。120キロ走行ならば、名古屋と大阪の間で 
1時間の時短が成立する。)

 当方は、通行料金にはあまり関心がない。金持ちという理由ではなく、道路好きな 
ので何らかのかたちで道路に関わるならば金額は気にならないのだ。しかし、これは 
一般的な考えではない。通行料金は利用するかどうか判断するときの重要なファク 
ターである。今回の調査は、高速道路のネットワーク化で複数のルート選択が可能に 
なった場合に、スムースに最短ルートの料金が課金されるシステムが成立するかどう 
かの確認である。

 鉄道の場合は、このシステムが成立しているので、途中下車しなければどのルート 
をたどっても最短ルートの料金が課金される。(ただし、例外は多い。すべての区間 
で成立しているわけではない。)ところが、道路の場合は、新規開通区間はその建設 
費の償却のため距離は短縮しても料金は高めに設定されることが多い。たとえば、別 
の報告でも記したが、京滋BP(バイパス)が瀬田東ICから巨椋ICまでの部分開 
通だったときは、並行する名神高速道路よりも高めの料金を設定していた。

 部分開通 
というハンディはあるが、思ったよりも名神高速道路からシフトしなかったのは、こ 
の料金のせいである。ところが、京滋BPを延長して大山崎JCTで名神高速道路に 
接続して、瀬田東ICから大山崎JCTまで2ルートになる時期が明確になった。高 
めの料金設定のままでは矛盾が生じるので、名神高速道路と同じ水準に値下げされ 
た。現在のところ交通量の統計が届いていないので数値では表現できないが、実走し 
た感じでは夜間でも大型車の需要が多くなったように見える。

 第二名神高速道路の開通で最も気になるのは高い料金設定である。建設費はこれま 
での高速道路建設の費用とは桁違いに多い。調査中の18キロを除いて3兆4200 
億円という事業費は、現在の名神高速道路の料金収入がすべて第二名神高速道路にシ 
フトしても償却には50年はかかると考えられる。ほかのローカル路線のように永遠 
に償却できない見込みよりは望みがあるが、償却期間を短くするために安易に高い料 
金設定を実施すれば、いくら時短効果が絶大でも敬遠されてしまう可能性はある。既 
存の高速道路とのネットワーク化により特別な料金設定は得策ではないことは明確で 
ある。少なくとも現状と同じ通行料金での供用を望む。

 第二名神高速道路は距離が短縮されているのに、なぜか現状と同じ料金になってし 
まう。料金設定は論理的に正しいのだが、心情的には高い料金に甘んじているという 
スタンスである。このスタンスでは、第二名神特別区間が設定されたら2重の割り増 
しと感じてしまう。このような理不尽な設定が実施されないことを望む。

(第二名神高速道路には本線料金所が設置されないので、出口でどのルートを通過し 
たか判断できない。そのため第二名神特別区間の設定は物理的に困難だが、ETCの 
普及によっては可能になる。ETCの目的はあくまでも料金所での渋滞回避なので、 
割り増し料金の課金など利用者を欺くようなことには利用してほしくない。)

 いずれにしても、第二名神高速道路は名阪間の高速道路ネットワーク構成には欠か 
せないルートである。予定通りに順次開通してほしいものだ。