ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

西瀬戸自動車道6



【まとめ】
 フル化を避けるべきということに帰結したが、さらに広域の高速道路ネットワーク 
の一部として捉えればある程度の改良の余地がある。

◆地図2
西瀬戸尾道IC付近地形図、および航空図
(地形図は国土地理院25000分の1地形図から引用。航空図は国土交通省中国地 
方建設局福山国道事務所WEBサイトから引用。)
 西瀬戸尾道ICは、高速道路に接続していない。接続しているのは、高規格道路で 
はあるが一般国道2号である。インターチェンジの形式はトランペット型の変形で、 
ループ区間に街路(旧国道2号)に接続するように合分流路が付加されている。国道 
2号(尾道BP)にも街路への出入口があるので、合わせた線形は複雑である。した 
がって、西瀬戸自動車道がこの先に延長されるようなかたちにはなっていない。

 ところで、高速道路である山陽自動車道へは2キロ岡山方面に国道2号を進んで福 
山西ICで接続している。通過時間は5分程度だが、実は国道2号が暫定2車線対面 
通行だったころは、ピーク時には30分程度かかっていた。現在はフル化されたので 
このような渋滞は発生していないが、それでも交通量は多めで慢性的に混雑している 
区間である。この区間には2ヶ所のトンネルがあり、混雑のネックになっている。

 西瀬戸自動車道の交通量は少ないので現状のままでも問題はないが、高速道路同士 
の接続によるネットワーク効果は大きい。山陽自動車道から西瀬戸自動車道へ連続利 
用するとき、福山西ICの手前にはわかりやすい案内板が設置されているので、何と 
か福山西ICでの流出を見逃すことはないだろう。福山西ICの国道2号(松永B 
P)接続における分岐でも迷うことなく広島方面に亘ることができるよう案内板があ 
る。もちろん、西瀬戸尾道ICにも案内板がある。

 普通に考えればなんら問題のない 
ルートである。ところが、単調な高速道路を長時間走行した果てにこのような分岐に 
遭遇すると、思わぬミスを引き起こすことがある。考えられる限り単純化させなけれ 
ば、高速道路の案内には不適切なのである。

 西瀬戸尾道ICからそのまま北進すると2キロで山陽自動車道に到達する。なんと 
か延長できないものだろうか。実現の可能性の低い「構想」としては線引きされてい 
るが、現状では着工の見込みはない。

 ところで、この到達箇所ではジャンクション工事が進行している。これは、松江に 
至る尾道松江自動車道の分岐である。尾道松江自動車道は、松江自動車道として20 
03年3月16日に三刀屋ICから宍道JCTまで開通した。宍道JCTで山陰自動 
車道と接続して、鳥取県の淀江大山ICまで直通している。山陰自動車道区間の需要 
は多いので徐々に交通量は増えている。ところが、松江自動車道区間には需要は少な 
い。尾道まで全通しても果たして採算の取れる区間になるのだろうか。尾道から1つ 
目の御調ICまでは需要がありそうだが、その先は期待できない。それでも、この高 
速道路は建設される。

 それならば、思い切って山陽自動車道と接続する尾道JCTに西瀬戸自動車道も直結 
させたらどうだろうか。山陰(島根)と四国(愛媛)に高速道路が必要なほどの需要 
があるとは思えないが、少なくとも尾道が各高速道路の結節点として、とてもわかり 
やすいかたちになる。利便性が高くなればある程度交通量は多くなるし、ネットワー 
ク化されれば交通量の少ない区間の存在意義が明確になる。

◆表4
2002年、2003年のゴールデンウィークの本四連絡橋交通量。
 西瀬戸自動車道は、ほかの本四ルートに比べてどの程度の位置づけなのだろうか。 
交通量だけで見れば、本四3ルートの全交通量の12%である。交通需要の多い近畿 
地方から遠ざかるほど、51%、37%、12%と割合は少なくなっている。◆表4 
は、2003年のゴールデンウィーク(GW)の交通量である。GWの交通量はほか 
の時期のほぼ2倍の交通量になる。つまり半分にすれば普段の交通量がわかる。な 
お、この表はGW10日間の合計なので、10分の1が1日あたりの交通量になる。 
たとえば大鳴門橋の普段の交通量は、14550台(=(291000/2)/1 
0)になる。なお、どの時期でも各ルートの利用割合(分散比)はほとんど変わらない。

 西瀬戸自動車道が開通したのが1999年11月なので、2000年以降の交通量 
統計を見ると、神戸淡路鳴門自動車道が増加傾向、西瀬戸自動車道が減少傾向であ 
る。西瀬戸自動車道は、開通初年は珍しさからか交通量が多めだったが、リピーター 
は少ないようだ。神戸淡路鳴門自動車道は大型車購入率が高く業務で利用されてい 
る。その利便性の高さから徐々にリピーターが増えている。瀬戸中央自動車道は、開 
通から15年目になり利用形態は安定している。神戸淡路鳴門自動車道の開通、西瀬 
戸自動車道の開通により交通量は分散されて減少しているが、大型車のリピーターが 
多い。

 この傾向が今後も続くとすれば、神戸淡路鳴門自動車道、瀬戸中央自動車道、西瀬 
戸自動車道の分散比は、5:4:1に近づくと考えられる。1日あたりの交通量で言 
い換えると、30000:24000:6000である。(◆表4の交通量は、各 
ルートの全区間を連続走行した交通量を求めるべく、県境を越える区間の交通量を記 
している。各ルートの全区間における交通量ではない。たとえば、神戸淡路鳴門自動 
車道の明石海峡大橋は大鳴門橋の2倍以上、西瀬戸自動車道の新尾道大橋は多々羅大 
橋の2倍程度である。)

◆図10
本四連絡橋関連の高速道路通行時間、および距離。
(本州四国連絡橋公団WEBサイトから引用。)

◆表5
本四連絡橋の通行時間、および距離、平均速度。
 このように交通量に大きな差があるので、各ルートの道路規格が異なるのは当然だ 
ろう。しかし、高速道路として最低限の高規格にしなければならないので、西瀬戸自 
動車道は過剰投資と揶揄されることになる。道路の規格は、神戸淡路鳴門自動車道は 
垂水JCTと淡路SAの間が6車線のフル規格で供用され、ほかの区間は暫定4車線 
で供用されている。淡路SA以南も6車線分の用地は確保している。しかし、4車線 
で十分な交通量なので、全区間フル規格と言っても問題はないだろう。瀬戸中央自動 
車道は、4車線のフル規格で供用している。西瀬戸自動車道は、未開通の3区間があ 
り、開通区間のほとんどが暫定2車線の対面通行になっている。

 西瀬戸自動車道は、ほかの2ルートに比べて格段に規格が低い。この規格の低さは 
平均走行速度に反映する。(◆表5)

 神戸淡路鳴門自動車道の全区間平均走行速度は約80キロ/時で、瀬戸中央自動車 
道は86キロ/時で、いずれも高速道路として機能しているが、西瀬戸自動車道は約 
52キロ/時と都市間の一般道路クラスである。西瀬戸自動車道以外の2ルートは全 
線のどの断面でも速度差はあまり見られないが、西瀬戸自動車道の速度は各断面でか 
なり異なる。4車線のフル規格で開通している区間は80キロ以上、2車線の暫定対 
面通行区間は70キロ、未開通区間は、島内が50キロ、今治BPが60キロ、それ 
に高速道路区間では7回の料金所での一旦停止がある。もちろん、未開通区間では信 
号交差点での停車もある。停車機会が多いほど通過時間の誤差も多くなる。とても高 
速道路とは言えない状況である。

 今後、2005年度に生口島道路、大島道路が開通し、2007年度に今治小松自 
動車道が全通すれば、ほかの2ルートと同様に西瀬戸自動車道も高速道路でつながる 
ことになる。料金所での一旦停車は1回だけになる。ただし、ほとんどの区間が暫定 
2車線対面通行のままなので、制限速度はせいぜい70キロである。平均走行速度は 
ほかの2ルートには及ばない。それでも、通過時間は115分から85分程度にまで 
短縮される。この通過時間は神戸淡路鳴門自動車道とほぼ同じなので、まあ高速道路 
としては合格の範疇だろう。(なお、全区間が4車線フル規格で供用されれば、通過 
時間は74分になる。)

 交通量の少ない高速道路は全国に多数の区間がある。西瀬戸自動車道もその区間の 
一つなので、未開通区間を解消して、2車線のままフル規格と見なして運用すれば塩 
梅が良いような気がする。もちろん、全区間がつながれば、本四連絡の高速道路ネッ 
トワークに組み込まれることになる。ほかの2ルートの代替が可能になる。1995 
年1月17日に発生した阪神淡路大震災のような大規模な事故の際にスムースな本四 
間の流通が可能になる。

 ところで、フル規格化は凍結して、確保済みの拡幅用地を自転車、原付道で運用し 
たらおもしろいと思う。先述のように歩行者、自転車、原付道の開通は海峡の架橋区 
間のみで、本四間を通して走行する場合は理不尽な迂回を強いられる。尾道と今治の 
間は70キロだが、自転車は7時間かかると公式なガイドに記されている。平均速度 
は10キロ/時である。自転車はそんなに遅くない。自動車道と同じルートならば2 
0キロ/時以上で走行できる。7時間ならば往復できてしまう。これは、観光を度外 
視した走行なので現実的ではないが、業務目的で原付が走行すれば30キロ/時なの 
で、140分で通過できる。125CC以下のバイクならば120分以内だろう。定 
期的な利用においても十分現実的な時間である。
 ほかに例のない高速道路運用として是非試してみて欲しい。究極のエコロード社会 
実験になると思う。

続く