ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

西瀬戸自動車道5



【将来】
(1)未開通区間
 未開通の3区間については、生口島島内の生口島道路、および大島島内の大島道路 
が、いずれも2005年度の開通予定で鋭意工事が進められている。

 生口島道路(6.5キロ)は、生口島北ICと生口島南ICの区間で、1999年 
度に着工した。この区間は島内の低い丘陵部を抜ける山岳ルートで、2ヶ所のトンネ 
ル(洲江TN(449メートル)、瀬戸田TN(717メートル)と12ヶ所の橋梁 
で構成される。特に工期の遅延が懸念される難工事区間はない。建設費用が見込み通 
りに確保されれば、2005年には開通すると考えられる。現在(2003年6月) 
は、既開通区間の交通規制を伴う工事には至っていない。元々、生口島北IC、生口 
島南ICともに本線の延長を考慮した構造で暫定供用していたので、完工までには最 
低限の交通規制しか発生しない。

 大島道路(6.3キロ)は、大島北ICと大島南ICの区間で、この区間も199 
9年度に着工した。この区間も島内の低い丘陵部を抜ける山岳ルートで、ほとんどが 
土工区間だが、5ヶ所の短い橋梁が架けられる。生口島道路に比べて道路構造物が少 
ない。

◆図9
大島北IC料金所位置変更案内図。
(本州四国連絡橋公団WEBサイトから引用。)
 ところが、大島北ICは本線が直接島内の一般道路に合流するかたちになっている 
ので、本線延長には大規模な既開通区間での交通規制が実施される。これは、大島北 
ICの全面改修である。まずは、本線料金所の移設である。(◆図9)

 新しい料金所も、実は暫定である。大島道路開通時には以前の料金所の位置に移設 
される。ただし、このときは大島北ICが現状とは異なる線形になっているので、単 
純に元に戻すということではない。
 このインターチェンジ改修は、既開通区間(接続する一般道路も含む)の交通量が 
少ないので、交通規制起因で工期遅延に至るとは思えない。したがって、大島道路も 
建設費用が見込み通りに確保されれば、2005年には開通すると考えられる。
 
 今治ICから今治湯ノ浦ICまでの区間は、2001年度に着工している。199 
9年11月に西瀬戸自動車道の海峡部がつながったとき、四国側の高速道路ネット 
ワークは脆弱で利便性は良くなかった。今治と松山自動車道の接続が必然となり、最 
も早く連絡する方法として、今治BPのフル化、今治湯ノ浦からは今治小松自動車道 
というルートを選択した。

 このルートは架橋には間に合わなかったが、2001年7 
月の開通後は西瀬戸自動車道全区間の利便性は高まった。今治BP区間は10.3キ 
ロで、今治BPを通過しても20分程度である。しかし、今治BPは平面交差の一般 
道路なので、ピーク時には定時性が保てない。また、高速道路での接続により出口、 
入口での停車や前後区間の加減速が回避できる。したがって、この区間の開通による 
時短は25分から8分の17分ということになる。問題は、時短効果が期待できる区 
間かどうかということである。

 一般的に時短効果は具体的な金額で表現される。短縮時間に交通量と時間単価を掛 
け合わせて算出された金額である。つまり、時短効果は交通量に左右されるのであ 
る。例えば1日12万台が通過する東名高速道路の東京ICと東名川崎ICの間には 
東京TB(本線料金所)があるが、何らかの手段でTB通過時間を1分短縮できたと 
する。今治IC以南の交通量を1日4000台として、さらに時間単価を同じとすれ 
ば、東京TBの1分短縮は、今治の30分短縮にあたる。

 今治IC以南の今治小松自動車道の全通は、生口島道路、大島道路の着工より2年 
遅れたので、2007年度以降と考えられる。つまり、西瀬戸尾道ICといよ小松J 
CTの間の西瀬戸自動車道の全通は2007年度以降ということである。

(2)フル規格化
 予定通り全通してもほとんどの区間は暫定2車線対面通行での供用になる。この構 
造は高速道路としては十分ではないが、交通量が少ないので仕方がないかもしれな 
い。逆に交通容量が少ないので交通量が少ないとも言えるが、果たしてこの区間にフ 
ル規格での供用を必要とする需要はあるのだろうか。
 西瀬戸自動車道の交通量は、季節による変動はあるがおおむね1日あたり1000 
0台程度の区間は、西瀬戸尾道ICと因島北ICの区間だけである。つまり本州の尾 
道市と因島市のリンクだけである。ほかの区間は、5000台前後である。(◆表3)
◆表3
西瀬戸自動車道と東海北陸自動車道の
2003年3月の日平均交通量。
東海北陸自動車道は、現在(2003
年6月)暫定2車線での供用で交通集
中による渋滞多発区間になっている。
4車線のフル規格化工事が鋭意進捗中
である。
 ところで、どのくらいの交通量があれば4車線以上のフル規格で供用すべき区間と 
言えるのだろうか。現在2車線暫定対面通行の区間で、フル化直前の区間として東海 
北陸自動車道の交通量を調べた。美濃ICと郡上八幡ICの区間は、15000台前 
後である。この区間は観光道路として利用されることが多い。特に冬季のスキーシー 
ズンの週末には大渋滞が発生している。当初は、特異日だけに発生していたが、徐々 
にシーズン中は慢性的に渋滞が発生するようになった。また、あらゆる季節において 
週末には渋滞の発生する可能性が高くなった。トンネルの連続する山岳区間で難工事 
が強いられたが、渋滞による損失が大きいためフル化に着手した。

 高速道路の利用形態は区間ごとに異なるので一概に交通量だけを基準に考えてはい 
けないが、1日15000台はフル化の目安にはなる。西瀬戸自動車道には1500 
0台以上の交通量が発生している区間はない。せいぜい尾道から因島までの区間がフ 
ル化候補になるくらいである。この区間は、西瀬戸尾道ICから新尾道大橋を渡った 
ところまでは既にフル化されているので、向島島内区間および因島島内区間をフル化 
すればよい。難工事箇所は見当たらないので、数年内で因島南ICまでのフル化は期 
待できる。
 しかし、ほかの区間は全く期待できない。むしろ、現状の2車線を完成と見なし 
て、危険箇所での中央分離帯設置や、長い区間への追い越し区間の設置を検討した方 
がよいと思う。それに、先述のように橋梁部には歩行者、自転車、原付道路を新設し 
ないとフル化できない区間がある。不必要なフル化を避けるのが賢明と思われる。

続く