ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

山手通り&首都高速中央環状線2-3



【西新宿JCT】(初台1東から初台交差点までの区間)
 西新宿JCTは、当該区間では首都高速中央環状新宿線の最大の地上構造物であ 
る。機能としては4号新宿線の高井戸方面と中央環状新宿線の各方面を相互連絡す 
る。南に位置する大橋JCTが全方向に相互連絡して、北に位置する熊野町JCTが 
板橋方面のみ都心方向(5号池袋線)に連絡している。その先は堀切JCTまで都心 
方向へは接続していない。つまり、中央環状線外回りでは大橋JCTの次の都心方面 
へジャンクションは堀切JCTということになる。さらにこの先は湾岸線との葛西J 
CTまで接続はない。逆に都心方面から中央環状線外回りへのジャンクションは、葛 
西JCT、堀切JCT、そして大橋JCTの3箇所だけになる。
(大橋JCT以南の中央環状品川線が未開通の間は、外回り(品川方面)から都心方 
面への接続はできない。)
 中央環状線の役割は都心に用のない「外外」交通の誘導であり、「内外」「外内」 
交通にはやや不便なかたちになっている。元々環状線は交通分散の機能を果たす。 
「外外」交通を誘導して環状線内の市街地の通過を回避させる。「内外」「外内」交 
通には、流れのよい放射線を選択して環状線で目的地までの放射線へ移る迂回が可能 
になる。これまでは、都心環状線がこの大役を担ってきたが、環状線全通してまもな 
くパンクした。即座にさらに外回りの中央環状線が計画された。ところが、特に北側 
区間(王子線)、西側区間(新宿線、品川線)は既存市街地を通過するため容易に施 
工することができなかった。紆余曲折を経てなんとか新宿線の開通に目処がたった。 
遅すぎる感があるが、それを良しとしても「内外」「外内」への対応を構造的に制限 
したことは果たして大丈夫なのだろうか。

 ◆図2
 西新宿JCT模式図。
 首都高速中央環状新宿線と新宿線の接続する西新宿JCTの線形を明示。
 立体交差の様子は、前面に表示されている線が「上」側にあることで理解していた 
だきたい。
 なお、線形はあくまでも予想なので、実際の施工では異なる線形になる可能性があ 
る。特に、左折方向(新宿線上り高井戸方面から中央環状新宿線熊野町方面へのアプ 
ローチ(初台交差点北西角)、中央環状新宿線大橋方面から新宿線高井戸方面へのア 
プローチ(初台交差点南西角))については、交差点内だけの空間ではカーブがきつ 
くなるので、交差点外の空間にも及ぶと考えられる。初台交差点北西角はすでにオペ 
ラシティが完成し区画整理済だが、南西角は未整理である。
 高速道路の構造と性能はホースに水を流すことに似ている。都市間高速道路は途中 
に穴のあいていないホースに水を流すようなもので、都市高速道路は穴のあいている 
ホースだろう。穴は出入口である。穴が無い場合や、少ない場合は高い水圧が保てる 
ので大量の水を流すことができるが、穴が多ければ水圧は保てない。ところで、ホー 
スの先端をつまむと、穴が無いと強烈な水圧がかかりホースが破裂することもありう 
る。穴が多いと先端だけでなく各穴に水圧が分散されるため破裂を回避できる。この 
場合でも水量が多ければ先端だけでなく、各穴から亀裂ができて破裂に至る。この破 
裂とは、交通渋滞のことである。

 首都高速道路は都市高速道路なので、ほとんどが穴の多いホースにあたる。例外と 
して中央環状線の堀切JCTから葛西JCTまでの区間は出入口が少ないので穴の少 
ないホースにあたる。この区間はスムースならば大量に高速に流れるが、一度渋滞す 
ると全区間が閉塞状態に至る。穴の少ないホースの両端(堀切JCTと葛西JCT) 
がつままれて、あふれるばかりの水が停滞した状態である。

 先述のように首都高速中央環状線の目的は東京都心に用のない「外外」交通の誘導 
である。現時点(2003年3月)の開通区間は高松Rから葛西JCTまでの北部と 
東部にわたる区間で、環状にはなっていない。それでも開通区間だけで埼玉から千葉 
への「外外」交通を誘導する機能は果たせる。しかし、2002年12月に開通した 
王子線区間以外は全区間が渋滞多発区間で、出入口が少ないため一度渋滞するとしば 
しば90分以上脱出できなくなる。当該区間は、川口線や三郷線から見れば放射線と 
しての役割も果たしていて、本来の流動を超える量の需要がある。仕方が無いのだろ 
うか。今後、中央環状新宿線、品川線が開通して東名高速道路や中央自動車道のよう 
な大きな需要への受け皿になれば、さらに逼迫するのではないだろうか。国内の他の 
都市だけでなく世界の主要都市の高速環状線において、首都高速中央環状線ほど脆弱 
な構造は見当たらない。高規格道路を建設する余地がないのならば、「外外」もしく 
は「中央環状線の線上同士」しか利用できないような構造して制限すれば本来の目的 
を果たせたのではないだろうか。もちろん、中央環状線上に1ヶ所も出入口を設けなけ 
れば「外外」専用になるが、これでは沿線の同意は得られないだろうな。

 東京外環自動車道の東名高速道路と関越自動車道の区間が大深度地下構造で建設さ 
れることになったが、一般道路への出入口を設置するかどうかは確定していない。こ 
の区間で思い切って出入口を設置しない各都市間高速道路を連絡するだけの構造にし 
てしまったらどうなるだろうか。さすがに都心から遠い環状道路なので「外外」専用 
にするわけにはいかないが、フルジャンクションとしてもかなりの分散効果を果たす 
ような気がする。ただし、埼玉県内の開通区間が穴の多いホースなので、中央環状線 
の堀切JCTと葛西JCTの区間のような両端がつままれた穴のあいていないホース 
になるかもしれない。いずれにしても政治的な判断ではなく、緻密なシミュレーショ 
ンにより合理的なかたちに落ち着いてほしい。

続く