ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

山手通り&首都高速中央環状線1-1



 最初に確認。首都高速中央環状新宿線は大深度地下構造というわけではない。大深 
度地下(地下40メートルより深い地下)での最初の認定区間は、東京外環自動車道 
の東名高速と関越自動車道の区間である。中央環状新宿線は、地上に道路用地を確保 
してその直下にトンネルを掘削している。ただし、この区間には何箇所かで既存地下 
構造物が横断しているので、それらをくぐる箇所では大深度地下に匹敵する深さに達 
している。また、山手通りは複数の丘陵地を横断している。地下の中央環状新宿線は 
地形に影響しない縦断曲線で通過するので、谷地の前後の丘陵区間ではかなり深くな 
っている。
 既存の地下構造物は、南から東急新玉川線、京王井の頭線、営団地下鉄千代田線、 
京王線、京王新線、営団地下鉄丸ノ内線、営団地下鉄東西線、営団地下鉄有楽町線 
(13号線も含む)である。このほかに半地下構造では、甲州街道初台アンダーパ 
ス、神田川、妙正寺川、新目白通り中落合アンダーパスをくぐっている。

 なお、中央環状新宿線と並走する(本町3から中落合1の区間では)都営地下鉄大江 
戸線は、首都高速の直下に一体構造で作られている。この区間では中野坂上と上落合 
2で丸ノ内線、東西線と交差している。この交差点直下では、首都高速は交差する地 
下鉄に挟まれたかたちになる。中野坂上では地下鉄の乗換駅が設置されているためコ 
ンコースを含めた複雑な重層地下構造になるかと思ったが、大江戸線の駅は交差点の 
北、丸ノ内線の駅は西にずれていて、連絡通路は中野坂上交差点の北西角の歩道直下 
を斜めに通過している。地平の道路(山手通り、青梅街道)を含めても4層で、案外 
シンプルな構造になっている。(厳密には、サンブライトツイン(丸ノ内線中野坂上 
駅)とハーモニースクエアを結ぶ山手通り横断地下通路があるので、層数としては5 
層である。)

◆図1
 首都高速中央環状線縦断図。
(首都高速道路公団WEBサイトから引用。)
 本報告では、目黒区大橋1、青葉台3から渋谷区富ヶ谷1、2までの区間の現況を 
記す。山手通りとしては菅刈陸橋から富ヶ谷交差点まで、首都高速中央環状新宿線と 
しては大橋JCTから富ヶ谷Rまでにあたる。(首都高速の施設名称はすべて仮称で 
ある。)
 この区間の山手通りは、目黒川の谷地から北上して松見坂まで一気に登り、神泉 
町、松涛の丘陵地を経て、その先は富ヶ谷まで緩い下り坂になる。首都高速は全線地 
下構造だが、大橋JCTと富ヶ谷Rで他路線および一般道路へ連絡する箇所があり、 
地上施設がつくられる。ほかに換気所が2箇所設置される。

◆画像1
 目黒区東山3
 首都高速(3)渋谷線、大橋JCT
 玉川通り下り線歩道、東急新玉川線池尻大橋駅前から渋谷方向をのぞむ。
 高架1層目の橋脚には、3号上り線用賀方面から中央環状新宿線への亘り線が載 
る。亘り線は上り本線(画面左側)とは離れて、画面右寄りに反れる。高架2層目には 
中央環状新宿線から3号下り線への亘り線が追加される。当該地点では本線への合流 
端(ノーズ)になる。
(2003年2月11日、著者撮影)
 大橋JCTは、この区間で最大規模の道路構造物である。首都高速3号渋谷線と中 
央環状新宿線、および中央環状品川線を全方向で連絡するフルセットジャンクション 
である。高架構造の渋谷線と地下構造の中央環状線を狭い道路用地で連絡するためア 
プローチランプにループ構造を採用している。
 ここで、お詫びと訂正を記す。当方は、かつてこのループは3重ループと考えてい 
た。3重ループの根拠は、アプローチランプの最高位置(ループから霞ヶ関方面への 
渋谷線本線オーバークロス)とループの直径、そして地下構造物の横断が絡む。さら 
に、都市計画変更にともなうルート変更が絡む。

 ループ直径を150メートル、勾配を3%とすると、ループ1周で14.1メート 
ル(=150×3.14×0.03)高さ方向に移動できる。2周で28メートルで 
ある。この位置で地下8メートルに達する。何とかトンネル区間に達することができ 
る。ところが、当初の計画ルートではこれでは浅すぎた。ループ直後に玉川通りをく 
ぐるようになっていた。玉川通り直下には東急新玉川線が走っている。
 しかも、玉川 
通りを高架で並走する首都高速3号渋谷線と一体構造である。首都高速と新玉川線は 
構造上1つの構造物なので、玉川通りと新玉川線の間の地下空間を事前に確保してい 
なければ、地下10メートル前後での玉川通り横断は無理だ。仕方ないのでもう1周 
して、地下22メートルまで達しておこうと考えてしまった。これがトリプルスパイ 
ラルの誤解のルーツである。(玉川通りと新玉川線の間に事前に首都高速の地下トン 
ネルが通過できる空間を確保していたかどうかは未確認である。ただ、新玉川線の池 
尻大橋駅から地上まで歩いた感じでは、ダブルデッキの首都高速が通過する地下空間 
よりもこの駅が深いとは思えなかった。)

◆図2
 大橋JCT付近首都高速中央環状新宿線計画路線図。
 渋谷線と中央環状新宿線を連絡する亘り線が、大橋2、駒場1地内の住宅や学校敷 
地地下を通過するように計画されていた。
(昭文社発行(1994年)の「首都高速便利ガイド」から引用。)

◆図3
 大橋JCT付近首都高速中央環状新宿線計画路線図。
 渋谷線と中央環状新宿線を連絡する亘り線が玉川通りに近接するようになった。ま 
た、ループの位置も変わっている。
(財団法人首都高速道路協会発行(2002年7月)の「首都高速道路出入口案内」 
から引用。)
 都市計画変更前の大橋JCT(◆図2)を見ると、3号渋谷線とのアプローチラン 
プを集めて、半時計回りにループ区間を経てから真北にループを離脱して、玉川通り 
をくぐり大橋2、駒場1地内を通過して東大裏で中央環状本線と接続している。先述 
のように玉川通りをくぐるというのは、東急新玉川線をくぐることになるので、ルー 
プ区間で十分に地下深くに達していなければならない。
 変更後(◆図3)は、3号渋谷線とのアプローチランプが集まる位置が渋谷寄りに 
ずれて、時計回りにループ区間を経てから東に玉川通りと平行方向にループを離脱し 
て、大坂橋※1北側で中央環状本線と接続している。もちろん、大坂橋の下では東急 
新玉川線をくぐっている。

※1 大坂橋
 大坂橋は1996年度の大気汚染(NOx)濃度で都内ワースト3だった。年間平 
均で77ppb。1位(82ppb)は松原橋、2位(81ppb)は大和町、同濃 
度で 3位が北品川で、いずれも都内有数の重交通幹線道路の交差点である。東京都の 
公開資料では10位まで記載しているが、10位が初台で72ppbになっている。
 さらに、2001年夏(8月7日から8月9日まで)、2002年冬(2月19日 
から2月21日まで)の観測結果を目黒区のWEBサイトから入手した。これによる 
と、夏は最高66ppb、最低18ppb、冬は最高97ppb、最低15ppbで 
ある。窒素酸化物の濃度は交通量(大型ディーゼル車混入率)や気象状況により大き 
く変化する。1日の平均値が記載されていないが、5年前の平均(77ppb)が大 
幅に改善された様子は見られない。
 目黒区のWEBサイト
 
では窒素酸化物の濃度を記した等高線を見ることができる。これによると、大坂橋の 
下の空間で最高値に達している。やはり、風通しの悪い箇所に汚染物質が溜まるよう 
だ。都内のワースト箇所のほとんどが、立体交差点で、一般道路同士の立体交差の上 
空をさらに首都高速が覆う箇所が目立つ。もちろん大坂橋もこのケースにあたる。

続く