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当HP主宰で当方のページを編集していただいている加藤健二郎編集長の紹介で、 秋庭俊著「帝都東京・隠された地下網の秘密」(洋泉社)を読んだ。東京の地下鉄の 多くは、関東大震災の復興時にかなりの区間が開通していたというユニークな提言を している。地下鉄のトンネルは昭和初期の第二次世界大戦までに完成していたが、一 般供用は銀座線のみでほかの路線は戦略的に利用された。敗戦後は占領軍が利用し、 東京オリンピックのころには順次一般供用していったという説である。地下鉄は基本 的には地下2階に建設され、地下1階には地下自動車道が併設されたとも記している。 東京の道路網は狭く曲折し自動車交通には不適切だったので、震災復興時には街路 網が計画された。これは、環状道路と放射道路で構成された合理的な計画だった。東 京オリンピックまでに多くの街路は完成し、今日の道路網の基本になっている。た だ、計画が壮大すぎて、いまだに開通していない区間もある。(放射5号、環状3 号、環状4号など。)これらの街路には地下自動車道が併設されている。一部は首都 高速道路や一般道路のアンダーパスとして利用された。 さらに、官公庁の集中する霞ヶ関周辺や、軍事関連施設周辺には巨大な地下空間が 建設されて、地下鉄や街路に並設された地下自動車道はこれらの施設を結んでいる。 後に地下空間は、高層ビルの基礎や地下駐車場に代用された。 建設当時の工事状況や、設計図面、一般供用された地下鉄や首都高速道路、地下駐車 場の現況などからこれらの本当の完成時期が相当昔のことである信憑性を説いてい る。震災復興計画は1920年代に開始された大プロジェクトで、驚異的なピッチで 進行すれば多くが75年くらい前には完成していたことになる。 |
◆メトロネットワーク (帝都高速度交通営団地下鉄のWEBサイトから引用。) |
最初にお断りさせていただくが、当報告は決してくだんの書籍を批判するものでは ない。かといって全面的に賛同するものでもない。当方は都市計画全般にとても関心 がある。くだんの書籍にも参考書籍一覧が記されているが、これらのうち東京の都市 計画に関わる書籍はほとんど当方も読んでいる。都市計画に関する書籍は、たいてい 「土木工学」「都市工学」「建築」など理系の専門書コーナーに置いている。一般書 籍で都市計画について語る書籍はほとんど見当たらない。「帝都東京・隠された地下 網の秘密」は一般書籍であり、単に事実だけを記した技術報告書ではない。この本は 一概に虚構(フィクション)とは言えないが、いくつかの憶測が含まれているノンフ ィクションと考えられる。 いずれにしても読後に多くのインスピレーションが引き出されたので、感想文から 派生させたかたちで当報告をまとめた。 ところで、インターネットや書評誌などでくだんの書籍に関する記事を読むと、 「土木工学の知識があれば楽しめる」という助言が多く見られた。確かにその通りだ が、肝心な点を忘れているような気がする。「東京の地下鉄路線図を理解していなけ れば楽しみにくい」ということである。ライターの多くが在京者ということだろう か。できれば模式的に路線を把握するだけでなく、東京の道路地図にプロットしたか たちで理解しているとさらに楽しめる。 例えば、模式路線図の多くは、中央区の銀座界隈を縦(南北)方向に西から銀座線、 浅草線、日比谷線が等間隔で平行に配置されているように見える。実際は、銀座線と 浅草線の間隔を1とすれば、浅草線と日比谷線の間隔は2以上である。銀座線の京橋 駅と浅草線の宝町駅の間は歩いても苦にならないが、浅草線の宝町駅と日比谷線の八 丁堀駅の間は雨天には歩く気にならない。 |
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