ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

益城熊本空港ICの追加効果1



 1999年3月24日、九州自動車道で熊本都市圏の3番目のインターチェンジと 
して益城熊本空港ICが追加された。熊本ICと御船ICのほぼ中間地点(やや熊本 
IC寄り)で、熊本市ではなく上益城郡益城町広崎に位置する。このインターチェン 
ジは、日本道路公団が設置したものではなく、地元の開発事業者負担のいわゆる「開 
発インターチェンジ」である。※1
 因みに、益城は「ましき」と読む。

益城熊本空港IC位置図。
 本報告では、益城熊本空港ICの追加効果について順を追って説明する。

【熊本都市圏の交通事情】
 熊本市の人口は約635000人で、九州では福岡市、北九州市に次ぐ大都市で、 
神戸以西の西日本全体で見ても広島市には及ばないが岡山市よりも大きい。隣接する 
都市圏で見れば政令指定都市に匹敵する規模である。それにもかかわらず、都市交通 
は脆弱で路面電車を残す意識は優れているが、2路線だけでは都市内交通のメインと 
は言いがたい。つまり、都市内交通のメインは道路交通である。熊本城南側の熊本都 
心部(CBD地区)の中心に位置する熊本交通センターの巨大なバスターミナルは、 
メイン交通としての威厳すら感じられる。このように道路には大きな需要があるの 
に、道路事情はあまり良いとは言えない。
 交通形態は典型的なピーク率(ピーク1時間あたりの時間交通量の日交通量に占め 
る割合)の高い通勤通学利用型である。朝8時台や夕方17時台には各道路に車両が 
集中し、各地で自然渋滞が発生する。

 熊本市の主要通過交通軸は南北方向で国道3号や九州自動車道が担っている。国道 
3号は、CBD地区の東側を迂回する熊本東バイパス(BP)が事実上の通過軸にな 
っている。熊本東BPは熊本市から東側の阿蘇方面へ連絡する国道57号が重複す 
る。(西原1から近見までは国道57号である。)

◆画像1
 熊本東BP(R57)
 熊本市水前寺6
 熊本県庁東門入口交差点と県庁通り入口交差点の間。
(2002年10月22日 著者撮影。)
 熊本東BPは広幅員の幹線道路ではあるが、熊本市内区間は龍田町陳内4の県道3 
37号熊本菊陽線との交差部以外は平面交差の一般道路である。画像1を見ると広い 
中央分離帯が確保されていることがわかる。この形式が標準で、ほぼ全区間に適用さ 
れている。つまり、車線増や主要交差点の立体化の余地を残している。現在のとこ 
ろ、この余地を活用する事業は進行していない。交通量はすでに着手の条件を満たし 
ているが、沿線の市街化が進行しすぎて環境面での問題が浮上しているのだろうか。 
早急に立体化を施すべき交差点は、西原1の国道57号と3号の分岐部、県道36号 
熊本益城大津線との県庁通り入口交差点、県道28号熊本高森線との神水橋交差点、 
国道286号との田井島交差点、国道3号との近見交差点だろう。県庁通り入口と神 
水橋は近いので、熊本工業高校前から上江津橋までの連続立体になると考えられる。
 いずれにしても熊本東BPは熊本市の最重要幹線道路である。この道路を有効活用 
させることが熊本都市圏の道路交通をスムースにさせるカギになる。因みに神水橋は 
「くわみずばし」と読む。九州地方の地名は簡単な漢字を使用しているが、案外読み 
にくい。
九州自動車道の開通経緯
 高速道路での南北軸は九州自動車道が担っている。1971年6月30日に九州自 
動車道の初めての開通区間として植木ICと熊本ICの間が開通してから、順次開通 
延長を延ばし、1975年3月30日に福岡市に達し、1995年7月27日に鹿児 
島市までの全区間が開通した。熊本都市圏(熊本ICと御船ICの間)については、 
1976年11月26日に開通している。九州自動車道の開通延長は短区間ずつ延ば 
し、24年かけて全通させた。意外に難産だったと言える。実は現在も人吉ICとえ 
びのICの間の加久藤トンネル(TN)は2車線で、4車線化が進行中である。

 九州自動車道の熊本都市圏における3つのインターチェンジ(熊本IC、益城熊本 
空港IC、御船IC)の位置。
 九州自動車道の交通量は開通延長を延ばすごとに増加しており、もちろん黒字路線 
である。1995年の全通以降は、南九州自動車道の部分開通など枝線の開通が交通 
量増加に加担しているが、おおむね安定している。熊本都市圏の各IC(熊本IC、 
御船IC)の交通量も安定していた。ところが、冒頭で記したように1999年3月 
に益城熊本空港ICが追加されたことにより交通量や利用形態に変化が見られるよう 
になった。
熊本ICの交通量経緯。(1997年10月から2002年10月まで)

益城熊本空港ICの交通量経緯。(1999年3月から2002年10月まで)
御船ICの交通量経緯。(1997年10月から2002年10月まで)
 益城熊本空港ICの追加前後で、熊本ICの交通量は約20%(5000台)程度 
少なくなっている。御船ICの交通量も約20%(2000台)程度少なくなってい 
る。減少分の交通量はそのまま益城熊本空港ICの交通量(7000台)に移行した 
かたちになっている。熊本IC、御船ICの交通量は益城熊本空港IC追加直後から 
現在まであまり変化していないが、益城熊本空港ICの交通量は漸増し、10000 
台を上回るようになった。全国の高速道路利用台数が景気低迷を反映して伸び悩んで 
いるときに、熊本都市圏では3つのインターチェンジを合わせた利用台数が着実に増 
加している。益城熊本空港ICの追加は、九州自動車道の利便性向上に相当大きな影 
響を与えたと言える。

続く