白川Rは現在でも名駅方面との連絡に利用されているが、さらにスムースな連絡が
できる構造にして、都心環状線への負担を軽減させたい。都心環状線は、4本の放射
線を受け止めているが、将来は6本を受け止めることになり確実に交通量は増大す
る。特に3号大高線上りからの交通量が多い。現在は新洲崎JCTまでの区間は大高
線だけの交通を受け止めているが、将来山王JCTで4号東海線の分を受け止めると
山王JCTから新洲崎JCTを超えて6号清洲線の分岐する明道町JCTまでの区間
は過飽和状態になると考えられる。この区間の状況は、阪神高速環状線の渋滞多発区
間である湊町と西横堀の区間に似ている。14号松原線と15号堺線の交通を一手に
受け止めるため交通集中起因の渋滞が頻繁に発生している。4号東海線は中部国際空
港のメインアクセスルートであり、開通前からこのような見通しをしなければならな
いのはまずい。
そこで、将来にわたりスムースな交通が予測される白川Rへ誘導するかたちで、出
入口付近の道路構造を改造することを考えた。名駅方面から理不尽でわかりにくい
ルートを経ることなく容易に高速道路へアプローチできるようにする。それで、次の
2つの方法を考えた。
(1) 新洲崎JCTの改造
5号万場線東行きから都心環状線へのアプローチ区間に下広井町方面への出口を
追加して、直接名駅南地区に連絡させる。
入口も同様に、下広井町方面から5号西行きアプローチ区間に直結させるランプ
を追加する。
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新洲崎JCTの改造平面図
現在は高速5号と都心環状線との高速道路同士のジャンクションのみだが、ここに高
速5号方面との相互連絡用出入口を追加する。
入口は、新洲崎JCTのクリアランスの都合でアンダーパスによって高速5号高架下
までアプローチして、都心環状線から5号下りへの連絡路に右側から接続する。出口
は、5号上りから都心環状線への連絡路の左から分岐して下広井町方面に降りる。連
絡路の線形の都合で鋭角カーブになるため路肩を大きく膨らませた高架ランプにな
る。現在でも新洲崎JCTの下部構造は複雑で不規則に橋脚が林立しているのに、さ
らに複雑な構造が追加される。地平での圧迫感は相当なのものである。実現性は低い
と思われる。
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(2) 白川Rの改造
名駅方面からも若宮交差点でのUターンを経ずに若宮大通の広い中央分離帯上で
Uターンさせて連絡できるようにする。
これらの比較すると、(1)が利便性では優れているが、道路構造が立体的に複雑
な構造になる。また、名駅南方面へ鋭角カーブのランプになり好ましくない。(2)
は、既存の一般道路平面だけの改修で済むので、建設費は少なくて済む。また、平面
構造なので景観(環境)への影響も少ない。
そこで、(2)の実現性について検討してみた。
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白川Uターン連絡路模式図
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白川Uターン連絡路平面図
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Uターン区間は、先述の吹上連絡路で実施済みなので、吹上と同じ平面区間の余地
がある白川への設置には何ら問題はない。R20(半径20メートル)のカーブは確
かにきつい。それでも吹上連絡路は、高速本線として実現していたのだから、白川の
ように出入口に付随する区間ならば危険性について特別な配慮は不要だろう。
Uターン区間へのアプローチ区間については、高架の橋脚が林立しているためある
程度線形は制限されるが、元々この区間はデザイン重視のため長スパンのボックス
ビームを採用しているので、橋脚は少ない。また高架下を公園として有効活用させる
ため整然と並んでいる。したがって、容易に1車線のアプローチ道路幅をゆるやかな
線形で確保できそうである。ただし現在公園として利用されている平面を割くことに
なる。若宮交差点から西側に中央分離帯の利用状況は、「公園1」「資材置き場」
「公園2」になっている。資材置き場はともかく、公園1、2はアプローチ区間に挟
まれるかたちになるので、これまでのようには利用できなくなる。まあ、これらの公
園の利用者は事実上いわゆるホームレスの方々なので、少なくとも利用していない地
元の一般の方からのSTOPはかからないだろう。なお、ホームレスの方には若宮交
差点東側の同じ中央分離帯上公園に収容施設が設置されている。
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◆画像5
白川R
白川R斜路途中で唯一のアンダー構造物。横断道路は北行き一方通行だが、容易に
横断できない100メートル道路(若宮大通)では、貴重な地先道路である。Uター
ン路を設置するとこの横断部の取り扱いが問題になる。
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アプローチ区間には1箇所だけ一般道路の横断箇所がある。北行き一方通行の隘路
だが、広い100メートル道路の横断や西行き車線からのUターンには貴重な施設で
ある。最も安易な構造では、横断箇所と平面交差させることになる。ところが、この
構造では横断区間でUターン車両の滞留ができなくなってしまう。次に立体交差だ
が、横断箇所のオーバーパスは高速本線へのクリアランスが確保できないので難し
い。アンダーパスにすると平面区間へ復帰させるためアプローチ区間が長くなってし
まう。いずれにしても立体交差では、構造が複雑になり建設費が高騰してしまう。安
価な白川改造を選択した意味が薄れる。やはり、横断箇所の閉鎖が適当だろう。堀川
左岸との交差点へ迂回すれば横断箇所の機能を果たせる。
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◆画像6
新洲崎JCT方向から若宮大通東行き、白川R合流部をのぞむ。最右車線がゼブラ
で規制されて、高速出口の合流をスムースにさせている。正面の信号交差点の右側
(高速高架下)あたりにUターン連絡路の入口を想定している。
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◆画像7
白川R(出口)斜路開始部。
この高架下にUターン連絡路の入口を想定している。ここは公園として開放されて
いるが事実上は、路上生活者の拠点になっている。
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◆画像8
白川R
斜路途中の横断道路交差部から若宮交差点方向をのぞむ。ここは、名古屋高速道路
公社の資材置き場になっている。想定しているUターン連絡路は、資材置き場内の構
内道路と同じ位置への設置を考えている。横断道路を生かす構造(立体交差)にすれ
ば、高速本線とのクリアランスから横断道路をアンダーパスさせることになるだろう。
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インターネットで調べると案外「交差点マニア」が多いことがわかった。交差点情
報はカーナビゲーションの交差点表示で必要なもので、調査からデータ作成まで多く
の方が専門で携わっている。こうしたプロの方だけでなく、カーナビの普及率から見
てもとても多くの方が交差点情報を間近にしているはずである。したがって、交差点
がネット上で話題になるのは理解できる。これまで交差点に特別な関心を寄せるの
は、規制する警察関係者か交通工学の研究者くらいだったが、思わぬ機会を得たものだ。
今回の報告は、地元の地理に詳しくない方には理解しにくいローカルなものになっ
てしまったが、これはあくまで一例であることを理解していただきたい。道路は建設
するだけでなく、いかにうまく運用するか、そのことにより有効な社会資本になる。
広い道路が開通しても諸々の理由で理不尽なチャンネリゼーションが行われたりして
いる。その理由はかなりその気にならないと調べがつかないことが多い。一般の方が
道路管理者の事務所に質問に行くだろうか。また、道路を専門に研究する団体に所属
しているだろうか。
道路は社会資本である。特別な説明をしなくても利用者が納得できるかたちで供与
されるべきだ。現在、4道路公団の民営化で道路行政に関心が集まっている。当方
は、以前から「道路」しか関心がないので、この状況を特別視はしていないが、近い
うちに世間の関心は失せることは予想できる。世間はそういうものなのだ。つい半年
前にあれほど熱狂したワールドカップが開催されたことすら記憶から消えかかってい
るのではないだろうか。道路は一過性の話題になるジャンルのものではない。敢えて
言えば「空気」のようなものだ。いつでも何もしなくても良好な状態が供与されてあ
たりまえ。当方は、それで良いと思う。決して感謝されないが、いつも良好なサービ
スを心がけなければならない。このような誇るべきジャンルだからこそ、これからも
当方だけは特別視を継続したいと考えている。
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