ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

パリ版環七「ペリフェリック」効果1



はじめに
ヨーロッパの都市の悩み

 2003年2月17日からロンドンで混雑税が導入される。都心の東西6キロ、南 
北7キロのエリア内への通行車両に対して1日5ポンド(約930円)を徴収する。 
制限された高速道路のように料金所が設置されるのではなく、このエリアの境界にた 
くさんのカメラを設置し、これらがナンバープレートを読み取り、料金の支払いを済 
ませていない車両に後日罰金を申し付ける。料金は、事前に納付しておかなければな 
らない。平日の7:00から18:30に適用される。ただし、低公害車は除く。こ 
のシステムは、道路交通の破綻した都市では画期的な渋滞対策と考えられている。ロ 
ンドンでは交通量の15%減、渋滞回数の30%減の効果が得られると目論んでいる。


 ヨーロッパの都市はスクラップ・アンド・ビルドという考えではなく、旧市街の地 
割をそのまま残して、高度な市街化が進行していることが多い。この方法では建築物 
の高層化には耐えられても、道路交通需要の増大には耐えられない。改善の必要性は 
十分承知しているが、大規模な区画整理をする余地はどこにも残されていない。その 
ため、苦肉の策として都心の侵入制限を実施することになった。ロンドンから郊外の 
各方向には放射高速道路が整備され、それらをつないで周回する環状高速道路(M2 
5)もある。ところが、これらの高速道路は都心には通じていない。郊外のインター 
チェンジから延々と一般道路を走らなければ都心には到達しない。首都高速のない東 
京のようなものである。1986年にM25が全通してロンドンの通過交通を除外す 
ることはできたが、交通容量の小さい都心アクセス用一般道路には何ら恩恵はない。

 ところで、ロンドンと同様に旧市街の地割のままだが、パリの道路交通は比較的順 
調である。都心の道路網は交通容量を著しく減少させるラウンドアバウトを基点とし 
て放射状に広がっている。空中から見れば美しいが、実用面では問題が多い。日本で 
も1960年代までは各地に見られたが、現在はほとんど残っていない。それでも、 
パリ都心の交通がほかのヨーロッパの都市に比べてスムースなのは、周回環状道路ペ 
リフェリック(BOULEVARD PERIPHERIQUE)のおかげである。
 PORTE DE BERCY 位置図




(Yahoo! France 
交通情報サイト(http://fr.cars.yahoo.com/ip/it/idf.html)から引用)
平日の午前8時30分ころのデータを取り出したが、ペリフェリックの交通量がほか 
の道路に比べて極めて多いことがわかる。
通勤時間帯で最も渋滞する時間帯ではあるが、ほぼ年中どこかの区間が渋滞している。
それでも、都心(ペリフェリックの内側)の交通が案外スムースなのは、やはりペリ 
フェリックによるところが大きい。
 ペリフェリックは、パリ都心の内外リンクの約30%が利用している。つまり、パ 
リ市郊外から都心に向かう車両の3台に1台がペリフェリックのどこかの区間を走行 
しているということになる。環状道路の使命は、複数の放射道路をつないで迂回させ 
ることにある。ある放射道路が混雑していれば、隣接する放射道路も混雑しているこ 
とが多い。ところが環状線を使って、離れているが順調な放射道路に高速で移動でき 
れば十分に迂回ルートとして成り立つ。ペリフェリックは、放射高速道路とも接続し 
ているので、都市間高速道路利用での遠方へのリンクにも利用されている。
 道路構造は、おおむね片側4車線の往復8車線で、放射道路との接続はすべて立体 
交差である。高速道路とのジャンクション付近では長い拡幅区間が連続している。極 
めて高規格な高速道路である。ただし、フランスの高速道路は基本的に有料道路なの 
で、厳密には無料のペリフェリックは高速道路ではなく一般道路(BOULEVARD)になっ 
ている。
 
  PORTE DE BERCY 全貌
中央縦方向がPERIPHERIQUE、左側縦方向がBOULEVARD PONIATOWSKI、
セーヌ川右岸の右方向がA-4、左側がQUAI DE LA BERCY。
(「PARIS VU DU CIEL」(1992年発行)から引用
(以下の俯瞰画像はすべて同条件))

続く