ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

新規高速道路建設と交通量の関係 1



 首都高速道路の交通量は1991年以降現在までほとんど増えていない。その間、 
何ら投資を行わなければ健全な経営と言えるが、実は2兆円を越える建設費を投じて 
総延長を55キロも延ばしている。高速道路の建設は10年を越える長期間に及ぶ。 
つまり、10年前には効果があると判断されて着手した区間でも、完成時にはその需 
要が失せていることもあり得る。首都高速道路を含む4公団(ほかに日本道路公団、 
阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団)の民営化が進む今、本件について検証する。
 
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首都高速(11)台場線
台場Rからレインボーブリッジ、
芝浦方向をのぞむ。
1993年8月26日開通
(「高速道路と自動車」
(高速道路調査会 
2001年3月発行)から引用)
 マスメディアだけの情報からは、建設推進派の政治団体、関連企業と、それと相反 
する慎重派だけの意見が取り上げられている。道路の実情とその将来について冷静に 
分析した提案は少ないような気がする。
経済成長が著しい時代では、慎重派が意見する機会すらなかった。1970年代以 
降、成長傾向は継続していたが、環境破壊や金絡みのきな臭い問題で、少しずつ市民 
の意見も抽出されるようになった。そして、バブル景気がはじけ、無計画な公共投資 
にストップがかけられた。投資額の大きい高速道路が、俎上に上がるのは当然の帰結 
と言える。その際に、冷静な分析は行われているのだろうか。推進派、慎重派の提示 
する数値、およびその考察は、いずれも自身の意見を正当化するために偏ったものを 
チョイスしているような気がする。


 たとえば、推進派の多くは将来の需要予測を提示 
してくる。それは現状の数値を成長期の上昇傾向で見積もっている。また、複数区間 
の設定(ネットワーク)による分散が考慮されていないこともある。第二東名、名神 
の建設費10兆円の返済計画でも、現状の東名高速、名神高速の収益をベースにして 
いる。2本になれば分散が発生するはずなのに、現状の収益を維持すれば30年で元 
金が、50年で利息を含めたすべての返済ができると想定している。東名高速、名神 
高速のすべての走行車両が第二にシフトして、交通量が50年間現状を維持すれば確 
かに可能な返済計画である。しかも、第二開通後は交通量が増えると想定し、通行料 
金も値上げされると想定して返済期間は短くなると楽観しているようだ。

 はたして、 第二東名、名神が完成したら、東名、名神の走行車両のほとんどがシフト
するだろう 
か。逆に慎重派の意見には、高速道路の建設が長期間に渡ることを考慮しないケース 
が多いようだ。ほとんどの高速道路建設費は当初見積もりを上回る。これは、見積も 
りが甘いのではなく建設期間中に社会情勢が変わるからである。見積もりをよく見て 
みると、「計画年次時点における見積もり」である旨が記されているはずである。ま 
た、社会資本への投資が即利益を生じる性格のものではないことや、複雑なネット 
ワーク効果についても触れていない。東京の交通渋滞が最も深刻だったのは、首都高 
速道路が開通する前の1960年代のことである。当時、都電が廃止されることに異 
論はなかった。現在は、都心部の道路交通にはやや余裕ができて、都電の復活案も出 
てきた。これは、景気低迷による全体的な交通量減少にも起因するが、首都高速道路 
へのシフト効果の方がはるかに大きい。
 
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首都高速(B)湾岸線 空港中央R
1993年9月27日開通
(「高速道路と自動車」
(高速道路調査会 
1994年1月発行)から引用)

続く