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英語圏大手メディアの"沖ノ鳥島"報道3

(報告:常岡千恵子)



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『ザ・ガーディアン』(英)  2005年4月5日付
     −太平洋における力の政策が、日中を岩と苦境の板挟みに押し込む

  東京から南へ1000マイルの太平洋上の無人の礁は、戦場に似つか
わしくない。だが、戦争はこれよりもっとつまらないもののために行われ
てきた。
  そして、沖ノ鳥島が急速に中国と日本の間に高まる緊張の中心となりつ
つある。

  (沖の鳥は)礁の2つの露出部が、満潮時でも海面上に出ているだけも
のだが、日本は法的に島とするのに十分だという。
  この立場を支えるため、沖の鳥の2つの先端をセメントで海面上に保つ
ことに、日本は2億5000万ドルを費やした。

  しかし中国は、沖の鳥は、ただの岩だと主張する。
  2つの濡れた巨礫で、太平洋の広域と、その潜在的な資源を支配しよう
とする日本政府の試みは、法的根拠がないとする。

  中国の沖の鳥に関する抗議は、広範で戦略的かつ軍事的重要性を帯びて
いる。
 この礁は、台湾とグアムの米海軍基地の間に位置しているのだ。

 米国の空母や軍艦が、中国の台湾への攻撃を阻止したり、撃退するため
に展開する際、中国の潜水艦がこの海域で迎撃するかもしれないのである。
  というわけで、日本がここにレーダーを設置するという報道を、中国政
府は嫌った。

  太平洋における力の政策に関する重要な動きのひとつとして、最近、日
米共通の戦略目標に台湾海峡の平和維持が盛り込まれたことがあげられ
る。

 中国の軍備増強に直面し、日本もまた、韓国やオーストラリアとの軍事
的協力強化を推進している。

 だが、台北の高名な研究家チョン・ピン・リン教授は、中日の離反は準
備体操にすぎないという。
 メイン・イベントは、米国に代わって、東・東南アジアを支配する政治
的・経済的・軍事的大国になるべく、加速する中国の巧妙な動きをめぐる、
闘争だとする。

 彼によれば、中国の胡錦濤主席の長期的目標は、米国の影響力を締め出
すことであり、中国はそのために周辺国に対して友好的な政策を採ってい
る。
 他方で、中国の軍事戦略は、戦闘の準備はしなければならないが実際に
は行わないほうがいい、というものである。
 中国は、新しい潜水艦3隻に合計144発の長距離核ミサイルを搭載し、
米国に明確なメッセージを送っている。

 より広範な中国の戦略として、アフリカやラテンアメリカとの石油外交
や、対中貿易に積極的なヨーロッパを米国に対抗させる動きもある。

 リン教授は、中国の主たる目標は、本土の防衛と統一、経済発展だとし
ながら、地域への米国の影響力を無効にすることが、究極的目的だと語る。
 この点に関し、人民解放軍の内部文書が示すように、中国政府は時代が
彼らに味方していると確信している。

 中国の台頭が、米国、日本、韓国やその他の国を、"中国封じ込め"に
動かしていると見る専門家もいる。
 だが、台湾海峡に紛争が起これば、米国よりもこの地域の国々が、中国
と戦争を始めるだろうと予測する。
  
 先月東京で、コンドリーザ・ライス米国務長官が、「米国は、自信に満
ち、平和的で繁栄した中国を歓迎する」と語ったが、最近の米国の中国の
人権問題に対する批判と考え合わせると、米政府が、東アジアの21世紀
の偉大なるゲームが、どれほど自らの利害に大きく関わるものか、理解し
ているのだろうかと疑問視する中国専門家もいる。

 中国専門家たちは、分別がなく、慢心に満ちた米国は、沖の鳥の日本人
同様、岩と苦境の板ばさみになる危険がある、と述べる。

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 やはり英国の高級紙も、沖の鳥の軍事的重要性を指摘し、日中関係悪化
の影に、米国を見ているようだ。

  これまで日本は、沖ノ鳥島周辺で何ら経済活動を行おうとしなかったの
に、急にEEZを強く主張し始めたのは、どうみても不自然である。
  その背後に、米国の圧力があったとしたら、すべてうなずけるというも
のだ。

  以下に紹介するアイルランドの新聞のオピニオン記事は、東アジアと米
国の動きにヨーロッパの反応も加え、グローバルな視点で極東のナショナ
リズムを読み解いている。

続く