活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 1-1



 『スター・ウォーズ』は、神話なきアメリカの神話である。
 1977年に「A long time ago in a galaxy far, far away…(昔々、はるか彼
方の銀河系で……)」と幕を開けたこの冒険活劇は、公開とともに全米を熱狂
させ、瞬く間に世界中で爆発的大ヒットを記録した。悪の帝国の支配に抵抗し、
自由を求める戦士たちの闘いを、当時の最先端の特撮技術を駆使して描いたこ
の映画に、大人も子供もたちまち夢中になった。監督のジョージ・ルーカスが
少年時代から温めてきたストーリーは、きわめて単純な勧善懲悪ながらも、い
かにもアメリカらしい自由の精神と、反骨魂に満ち溢れていた。
 その後『スター・ウォーズ』は壮大なサーガ(系譜物語)へと進化し、また、
1983年には米国の戦略防衛構想の別称に用いられるなど、文字どおりアメリカ
の神話としてのステータスを確立。サーガの誕生からすでに四半世紀が経過し
たが、物語は未だ完結を見ていない。

 『スター・ウォーズ』サーガは、今なお世界中で絶大な人気を誇る、超大作
シリーズだ。しかしながら、1999年からスタートした新三部作から、どうも様
子がおかしい。1983年に終結した旧三部作とは、まったく別の作品群に変質し
てしまったようである。旧三部作の根底に流れていた、いわゆる古き良きアメ
リカ的な素朴さや美徳は見る影もなく、独善的で尊大、かつ貴族趣味的な世界
観(宇宙観?)が目につくのだ。
 いうまでもなく、『スター・ウォーズ』サーガは、難解な哲学や高邁な芸術
性とは無縁の、大衆娯楽作品群である。人気娯楽作品には、同時代の大衆の夢
や欲望や思想、社会の風潮が色濃く反映されているものだ。ことに、アメリカ
の神話として米国民から揺るぎない支持を得ている『スター・ウォーズ』なら
ば、なおさらであろう。
 旧三部作の終結から16年を経て登場した新三部作の変節は、ほかでもない、
米国民の意識の変化を表しているのではないだろうか。

続く