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チェチェン・グロズヌイ攻防戦末期。 ロシア軍狙撃兵を警戒して前進するチェチェン独立派決死隊。 「フゥゥン」という狙撃弾の飛翔音を感知できたのは、手前の兵士と、前方で前 のめりになる兵士と、カトケンだけだった。カトケンは近眼だから、聴力は人よ りちょっといい。兵隊ってのは、けっこう耳の遠いヤツが多い。爆発音や銃声 で、鼓膜と聴覚神経が鈍感になってるのか。 5〜6発目の狙撃弾が左の金属壁に当たって「コン」っていう音がして、他の兵 隊たちも気づいた。 動きの鈍いチェチェン兵たちに当てられないとは、このときのロシアの狙撃兵の 腕もたいしたことない。 映画「スターリングラード」とは大違いだ。 |
で、先遣偵察隊を2人出すことにした。 先遣偵察隊というと、聞こえはいいが、囮部隊である。 囮部隊の2人は、すぐに決まった。 「オレさまが行くぜっ」と、2人が即、立候補。、このときの2人、映画になる ぜっ、てくらい輝いてた。これぞ戦士の生き方だね。 1人は、この撮影の5日後に、スホーイ25地上攻撃機の爆撃で軽傷を負うこと になる。 もう1人は6日後に、砲撃の破片をノドに食らって軽傷となる。 2人とも軽傷で済んだところが、ベテランっぽいね。 映画のヒーローは無傷でもなく重傷でもなく、やっぱ、軽傷でしょう。 |
囮の2人のうしろでは、しっかりと、チェチェン人狙撃チームがバックアップ。 狙撃チームは、監視索敵の1人と狙撃手の2人構成だ。監視役は、傘なんか持っ てかっこつけちゃって、英国兵ぶりっこ。 狙撃合戦のこういう現場でも、かっこつけあう遊び心がないと、戦争なんて、 やってらんないよね。 この数日後から、ロシア兵の狙撃は正確になってくる。 兵士を入れ替えたのかもしれない。 1995年2月中旬。 |