インフラ海外拠点東ヨーロッパ

家庭崩壊の結末

セルビア新聞社の仕事
(撮影/文、ベオグラード在住HOS吉田)


べオグラード郊外で、火事が発生。現場に到着すると、
火事の規模はそれ程大きくは無かった。しかし、現場に着いて
しばらく経ってから、この火事は家主自ら放火していたことが分かった。
放火した家主の男は10年位前から、奥さんと子供達から邪魔者扱い
されていて、奥さんには愛人が居たと言う。その10年間の間、自分と言うものが
無かったそうだ。そしてこの日、たまたま奥さんと子供達は外出中で、家には家主
一人だった。「もう我慢が出来ない、すべてぶち壊してやる」と、ブチ切れて、
家に火を放った。
撮影は2005年9月22日。
火事現場。家の前の通りから撮影。木が邪魔で見ずらい。
この時点では、警察官から「危ないから近ずくな」と、言われていて
なかなか近くまで寄る事が出来なかった。
警察官が僕の方を見ていない隙を突いて、家のフェンスまで
近ずいて撮った一枚。火事の規模は大きくなかったので、この一枚で
全体のニュース写真の押さえとした。
当初僕は、てっきり放火した男は、警察に連行されたと
思っていたが、なんと未だパトカーの中にいた。警察官からは
絶対に撮るなよと、釘を刺されたが、ここで諦めては新聞社のカメラマン
は勤まらない。僕は少し作戦を考え、僕と同行した女性記者がこの男に
聞き込みをやると言う感じで、ゆっくりとパトカーに近寄った。

 パトカーの所まで来ると、運転席に警察官が一人、パトカーの周りには誰もい
なかった。
パトカーの窓は開いていたので話しかけてみると、とても感じの良い親父さん
で、手錠はされていなかったので窓から手を出して僕に握手をしてきた。
幸運にもこの警察官は何も言わなかったが、手振りで撮影は駄目だと合図
していたので、少し心臓はドキドキしていたが、隠し撮りした。だがピントはい
まいち。
記者の聞き込みにはペラペラ喋っていて、「妻も子供達も長い間私をイジメてきた、
今日はすべてをぶち壊したんだ。私はやっとこの苦しみから解放されたんだよ」と、
笑っていた。

続く