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通信アナリスト・渡辺真由美のシンガポール <4>

 

冷房が効き過ぎている喫茶店で、コーヒーを飲みながら、シンガポールの青年は
主張する。日本に比べてシンガポールは劣る。生活水準は日本より高いけれど、
でも日本にはソニーやホンダがある。シンガポールには外資系企業しかない。

政府はベンチャーを補助する制度を設けたが、補助の対象が見つからない。大臣が
インドや日本や香港にまで出かけていって起業家を募集してこなければならな
い。日本には文化がある。シンガポールの他国民族が培った豊かな文化なんて政
府のプロパガンダである。中国文化の遺産?若者は料理をしない。そして料理を
娘にしつけられない母親というのは、スプーンのほうが楽チンだということでお
箸を食卓から追放したとんでもないグウタラである。日本人は小さな子供から老
人まで箸さばきが見事であるが、シンガポールでは年配者の中でも箸が上手に使
えない人が増えているそうだ。
(写真)
宗教省の建物(ブルネイ)



日本のオピニオンリーダーである曽野綾子が、徴兵制があるシンガポールは大人
の国と偉そうに言っていただと?信じられない。子離れができない母親たちは軍
に陳情をしたんだよ、私の可愛い息子に炊事や身の周りの世話といった過酷な労
働を課せるなと。軍はそれを聞き入れて炊事や洗濯をアウトソーシング(外部委
託)するようになった。僕の世代は皿洗いくらい自分でやった。皿洗いさえ徹底
できないこんな軟弱な軍で国が守れるのか。日本人の男は皿洗いぐらいできるだ
ろ。
(写真)
ブルネイ王家所有のモスク


企業収益が悪化している中で、日系企業は在外事業所の経費を切り詰め始めた。
駐在員の数、そして彼らの手当て額を減らした。大手起業は家族の旅費、保険、
家賃そして他の生活の手当てを捻出する余裕はまだあるが、そういった余裕がな
い中小企業からは単身赴任者が多い。お陰でじじばばだらけだった日本人社会は
若返ったと言われている。また男性の単身赴任者に対してだったら、アパートで
共同生活させて家賃を浮かせることはできるが、家族連れにはそういう処置はで
きない。企業収支が悪化すれば単身赴任者が増える。また、安楽死と言われる配
転も増えてきたと言われる。定年間際の社員を系列会社に出向させる代わりにシ
ンガポールの現法の社長に就かせ、暑さでばてるのを待つ。
(写真)
携帯電話に加入するための列(ブルネイ)
ブルネイでは、携帯電話普及拡大作戦が
行われていた

その一方、職場での労働は強化された。海外赴任しても日本の同僚に合わせて休
日も出勤する。一年余り職場、日系書店、そして自宅を行ったり来たりしていた
だけであったという話は珍しくない。また英語が堪能であれば、表面的には他の
日本人にうらやましがられるが、彼らは腹の中ではコイツは仕事をサボっている
遊び人とつぶやいているかもわからない。

日本企業の海外事業部門が縮小すればするほど、管理職に登用されたキャリア独
身女性も目立つようになった。女性はやる気である。しかし企業は冷酷である。

シンガポールで90%の市場シェアを取るより中国で1%のシェアを取るほうが大
事である。優秀な人材は中国に投入している。残念ながら女性の思い込みに反し
て、企業は彼女に期待していない。最近、図に乗って年俸1000万円を要求し、帰
国したら解雇を通告されたというバリキャリ女性の話が話題になった。
(写真)
携帯電話の売り場。
ブルネイでは、携帯電話を買うだけで
約2万円かかる
日本より安全で平和ボケしていても生活していけるシンガポールには、ちょっと
背中を押せばがむしゃらに働くキャリア女性を配置すれば、給与や手当が浮く。

残念ながら、本社から送り込まれてくる女性キャリアの多くは、日本でもおそら
くそうであっただろうが、自意識過剰である。他の女性に対して優越感を持とう
と取り付く島がない。日本では英語ができれば、できる女という評価が得られ
た。しかしシンガポールでは言葉が二つ三つ操れることなど当たり前のことであ
る。シンガポール英語はシングリッシュと呼ばれ、なまっているが、自分のカタ
カナなまりを棚に上げてローカルには染まりたくないという。そういう彼女も着
任したときは、中国語と英語の区別がつかなかったというのに。

キャリア女性とは別に、観光ビザで入国し、日系企業に現地採用されるきっかけ
を探す女性も増えている。また駐在員の妻で来てもこちらで働く人もいる。給与
は安い。S$2500−3000である。そして労働市場は動いており、企業はより有利な
条件で人を雇用したがる。エリート意識に浮かれているキャリア女性の地位が脅
かされる日は来るであろう。

かつてメイドという職業はフィリピン女性が独占していた。フィリピン女性は週
休1日でよく働き、また性格が明るいと評判はよかった。しかし、休日返上で働
くインドネシアの女性がこの数年間数多く進出してきており、歓楽街で群れるフ
ィリピン女性の数は潮を引いたように減った。

日本人駐在員は責任転嫁に都合よく利用される。何か問題が起これば駐在員の責
任にすればいい。

続きをお楽しみに