昨年6−12月にグルジアで武装勢力に密着取材したジャーナリストの常岡浩介氏に聞いた。
(共同=佐藤親賢)
−米国はパンキーシ渓谷にアルカイダ兵が逃げ込んだと主張しているが。
「タリバンの残党がイラン経由で入国したとグルジア当局者から聞いたが、パンキーシでチェチェン
人を支援しているのはトルコ人やアゼルバイジャン人義勇兵で、アルカイダ兵はいなかった。チェチェ
ン人が『なぜウサマ・ビンラディン氏はわれわれを支援しないのか』と不満を表明していたほどだ」
−「アルカイダ潜伏」は米軍派遣の口実か。
「そういえると思う。グルジアは経済の破たんで兵士に給料が払えず、正規軍の装備も貧弱だ。国内
にはアブハジアや南オセチアのほか、トルコやアルメニアの国境でも独立の動きがあり、シェワルナ
ゼ政権は米国の支援を必要としている。中央アジアに続いて権益確保を目指す米国の利害と一致した」
−グルジアでのチェチェン武装勢力の現状は。
「パンキーシ渓谷ではチェチェンのゲラエフ司令官らがイスラム義勇兵を含め約600人の部隊を指
揮しており、チェチェン武装勢力の拠点となっている。チェチェン部隊は自動小銃や携帯式ロケット
砲などのロシア製兵器で武装し、個々の装備はグルジア軍を上回るほどだ」
「わたしが従軍したゲラエフ司令官の部隊は東部のパンキーシから西部のアブハジアまでグルジア軍
のトラックで移動、アブハジア軍と交戦した。グルジア、チェチェン間で、対アブハジア作戦に協力
すればチェチェン部隊に食料や武器の支援をするとの密約があると聞いた」
−チェチェン人がテロリストと非難されている。
「チェチェン人はロシアからの独立のために戦っており、米ロが主張するようなならず者ではない」
【略歴】1969年7月長崎県生まれ。早稲田大卒。94年長崎放送に入り98年フリーに。チェチェ
ン、アフガニスタンなどを取材。
(写真と報告:常岡浩介)
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