「観光用PR番組撮影と偽リビルマに潜入」というのがこの映画の売りだが、
ジャーナリスト稼業やっていた立場からすると、これを売りにすることで「やや
こしい奴だなぁ」というイメージになってしまう。
ミャンマーに入るカメラマンやジャーナリストが観光で入って素知らぬ顔で取材
して帰ってくるなんていうのは、1980年代からごくごくあたりまえのことで
ある。そういうことを偉そうに表面に出さないで、なんとなくナーナーにやって
きたのが、ジャーナリスト君たちとミャンマー政府の付き合い方だったのではな
いだろうか。でも、撮影監督のスイス人は、そういうアジア的ナーナーが許せな
かったのかもしれない。
私がこの映画を観て、初めて知ったことは、ミャンマーの大遺跡の観光には、熱
気球によって上空からのんびり楽しむツアーがあることだった。この映画では、
そういう光景を「誰もが知ってるビルマの表の顔」として、少数民族への弾圧な
どを「ビルマの知られざる面」としている。しかし、私の周辺では、逆で、ミャ
ンマー(ビルマ)といえば弾圧とか内戦のほうが表の顔で、遺跡上空熱気球の旅
はほとんど知られていないかった。スイスと日本の、ミャンマーに対する認識の
違いもこの映画では示されているということになる。
映像の画質は、ドキュメントとしてはかなり良質なので細かいものも識別しやす
い。反政府ゲリラに同行したシーンでは、ドイツ製コピーのG3小銃を持つ兵隊
の部隊がいた。G3のコピーは不良品が多いため、前線部隊ではあまり使わない
という話は、カレンで戦っていた日本人義勇兵から聞いた。つまり、この映像か
らは、それほど緊迫していない地域であることが想像できる。別のところでは、
カラシニコフばかりの部隊もあったので、そういうところの比較は見れておもし
ろい。また、日本人義勇兵たちから聞いたマイナーな村の地名も出てきたので、
2003年ころには、カレン民族解放軍が、いかにボロ負けになっているかもわ
かった。画質が良いので、他にも細かいこと「あれは、中国製だ」とか楽しめ
る。インタビューが多いので字幕に目がいきがちだが、せっかくの潜入映撮影像
だから、たくさんの情報をゲットしよう。 |