「最近の若者は弱い」という認識は大きな間違いだと考えを改めた。今の日本の若者 には、強さを発揮する場面が与えられてないだけ。「ここまで追い詰められても、 ちゃんと職に就いて生きていける」ということを実証した希望を与えてくれた本。ま だまだ俺も負けてられんぞって。
追い詰められれば日本の若者も、ここまで、能力を発揮する。計画性もなくサバイ バル能力もなかった市橋達也氏が、「捕まりたくない」という原動力だけで、社会や 自然環境に適応してゆく能力を身につけてゆき、逃亡者としての勘や素早い決断力を も身につけてゆく。逃げ切るための根性も凄いもんだ。その根性が肉体を野生的に強 くしたようだ、しかも、たった数日間で強い野生になってしまったようで、これは やっぱ人間という動物の底力も凄い。市橋氏が片足はだしで逃げ出したのは2月の冬。
本文中の、ピンときたひと言は「過去の自分の実績とは無関係な生き方をするこ と」だ。市橋氏は、論理的に考えてそれをやったのではなく、直感によって、そうい う方向へ転がっていった。だから、警察も足取りをまったくつかめなかった。 さて、自分に当てはめた場合、「過去の自分の実績とは無関係な生き方をするこ と」ってなんだろう?
土建業界ダメ。山中サバイバルもダメ。大都会もダメ。国外逃亡も軍事関係もダメ。 いろいろなことやってきてしまったツケがまわってきたなあ。世の中にデータを残し てきてしまった人間の弱味だ。
市橋氏が姿をくらませたのは、逃亡を助ける他人や組織を1つも持っていなかったこ とだろう。整形手術が唯一、それといえるかな。だから、そこが落とし穴になった。 現代の日本で、2年7ヶ月間とはいえ、こんなふうにちゃんと職業と収入を得ての 生き方が可能だということを思うと、実名で堂々と職探しをできる健康人が失業して いたり生活費に困っているのは、ただの甘えなのだろう。そして、サバイバルを売り 物にしてきたつもりのカトケンも、市橋達也ほど強くなれないかもしれない、という かなりの敗北感。
そんな私には、この本から学んだことが、まっとうな人生やってる人の数十倍以上あったかも。
「悪いことをした」という自覚のある人は、自分の置かれた苦しい環境に寛容になれ たりする。これは、「自分はいつも正しい」と自信もって生きてこれた人には想像に にくいことらしい。 |