「都市伝説の真実」宇佐和通 祥伝社黄金文庫
都市伝説というキーワードによるパフォーマンスが流行っているようだ。裏付けのない噂が語られているだけなので、娯楽の一種と考えている。それでも、上質な話がうまい語り手にかかれば、心地よい。事実かどうかなんて問題ではない。ところで、なぜ都市伝説にはホラーが多いのだろうか。事実にせよ創作にせよ、恐怖に帰結させる必要ないと思う。怪談はどの時代にもニーズの多いパフォーマンスの地位を維持している。本質的に人が要求するものに違いないが、都市伝説と関係があるとは思えない。都市伝説は、単に事実をモチーフにしたフィクションである。事実がすべて恐怖に帰結していないのだから、不自然な気がする。安易にホラーでまとめずに個性的なオチをいろいろと考えていけば、良質のフィクションになるのに、惜しい。
「テッカ場」北尾トロ 講談社文庫
鉄火場とは博打場のことだが、広い意味で「騒然とした場」で使われている表現である。この本では、目の血走った人が集う、さまざまな話題の場に、客として訪れた記録である。作家として売れてくると、この手の緩い企画による取材手記が本になる。企画旅行で無知な印象を記すよりはましだが、せっかくの機会なのだから何らかのポリシーが欲しい。きちんと取材して、裏をとれば良質のノンフィクションになるのに、惜しい。 |