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映画「靖国(YASUKUNI)」in 右翼110人


(加藤健二郎 2008.4)


新宿ロフトプラスワンで、映画「靖国」の試写会が行われた。
カトケンが、この試写会を知ったのは、4日前の一水会フォーラムでだったので、
招待券もないし、取材申請もしてなかった。

でも、この世界では、東長崎機関の顔の効き目があった。

日本の右翼約110人と、マスコミ80人が集合している。
上映後、その中から、主催団体代表など、右翼界で知名度のある人たちが登壇し
てトーク開始。
ロフトプラスワン創設者の平野悠が司会をする中、ちょっとチャカシた言葉を吐
いただけで、会場の右翼(たぶん偉い人なんだとおもう)から、怒鳴られて叱ら
れてた。つまり、いつものロフトプラスワンのように、楽しくワイワイではな
く、かなり真面目で本気モードの試写会でした。司会平野氏も、その怖い雰囲気
を察して、すぐに謝罪していた。ふだんなら、こんなことで謝罪なんかしない人だ。
 で、映画の出来は・・・・・。
ドキュメント映画としては、なかなか良い。ナレーションやテロップで、視聴者
の思想をある方向に誘導しようとしていないところが、ドキュメント魂だ。映画
は、テロップやナレーションではなく、映像で勝負する。

 靖国神社で主張する外国人に対して「国へ帰れ」という罵声を浴びせる日本人
が突っかかってくるシーンがいくつかあるが、日本人がいかに外国人に対して排
他的な態度を取る人間かがよくわかる。この排他シーンを観て、会場の右翼の人
たちは「日本人の恥ずかしい部分を録られた」とはおもっていないようだった。
こういうところが、この映画の味なところだ。右翼保守系の日本人が「断固たる
態度取ってて素晴らしいシーン」とおもっていることが、違う立場の人から見る
と、すごい恥部だったりするのだ。

一方、90才の日本刀職人がほぼ主演という形で全般に出てくる。中国人監督
の、職人に対する敬意を感じる、なかなか良い構成になっている。あれだけの高
熱と湿気のあるところでの安定した撮影、画面の鮮明さもいい。
露出バランスもいい。ドキュメント映画のレベルではない気がする。90才の職
人の笑顔がいい。そして、身のこなしや細かい作業など、若い。他のシーンに比
べて、高レベルの映像になっている。これは、日本刀職人に対する敬意からでは
ないだろうか。

右翼の人たちの中でも、これは反日映画だ、これは親日映画だ、と意見が割れて
いた。右翼という形でほぼ似た意見を持っているはずの人たちの意見を割ること
ができるというのは、作品としては、かなり素晴らしい。ドキュメント映画の目
的、事実を録って編集したので、観た人たちで自由に考えてください、というも
のが成功している。また、観客の中で、かなり激高している人がいた。大の大人
をこれだけ怒らせるって、芸術家としても、最高の気持ちだろうね。しかも、た
だの大人ではなく、そっちの世界では「偉い」とされている大人だ。日本男児の
中の日本男児とされている大人だ。


映画「靖国(YASUKUNI)」公式サイト

監督:李大穎 (リー・イン)