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ニカラグア革命戦争映画「アンダー・ファイア」


(加藤健二郎 ?年)

ニカラグア革命戦争映画「アンダー・ファイア」 (VHS)
(UNDER FIRE)

私が、人生中盤戦の約15年間を戦争屋として過ごしたキッカケには、多くの戦 争映画などが介在しているわけだが、この「アンダー・ファイア」ほど、カトケ ンの戦場人生とオーバーラップしている作品はまだない。

ストーリーは、アフリカの内戦取材からはじまり、「今はニカラグアがおもしろ いぜ」ということでニカラグアへいって、ニカラグアのサンディニスタ革命勝利 の日までの取材の日々だ。 まず、アフリカ内戦のシーンで、アメリカ人傭兵が政府軍と間違えて反政府ゲリ ラのトラックに乗ってしまっているシーンがあった。「こんな間違いってあるか よ」っておもう人もいるかもしれないが、私も、チェチェンで同じ間違いを経験 している。ロシア軍側にいくつもりだったのに、チェチェン独立派ゲリラ部隊の トラックに乗ってしまって、ロシア軍包囲下のシャミール・バサエフ部隊へいっ しまったのだ。 そして、ニカラグアといえば、カトケンが、22日間のジャングル戦軍事訓練を 受けて、まあ、はじめての戦争体験といってもいいかもしれないものをたっぷり と味あわせてもらった国である。だから、この映画「アンダー・ファイア」には 深入りしてしまう。銃撃戦が始まっているわけでもないのに、恐怖で緊張してい るシーンの描写をしている。その緊張が観ている人に伝わっているかどうかは微 妙だが、こういう形で緊張を伝えようとしているところは、なんでもかんでも派 手にドンバチやって伝えようとする映画監督よりも信頼をおける。

たまに出てくる戦闘シーンも、娯楽目的の派手さを控え、現実的な地味なシーン にしてある。戦闘なんていうのは、それほど長い時間続くことは稀で、瞬間勝負 だという描き方も、ちまたにある派手な戦争映画よりも、うまいこと緊縛感を出 しているような気もする。いや、中米の内戦を経験してしまったからそう感じる たげで、一般の人にとっては、消化不良なチンケな戦闘シーンに見えるかな。で も、実際の戦闘、特に市街戦は、こういうもんなんだとおもって観てもらえるといい。

外国人傭兵のお仕事が、戦場での銃撃戦よりも、捕虜や捕獲スパイの処刑だとい うシーンもある。多くの地域で、傭兵には、まず、処刑の仕事からやらせて忠誠 度を確かめ、それと同時に、弱みの握り合いをして裏切らせないようにするとい うのは、オーソドックスな傭兵採用課程といわれている。また、ジャーナリスト に取材され写真や映像を撮られた現地人は、治安部隊に命を狙われやすくなると いうのも、戦場の当たり前すぎる現実で、そんなことも、この映画は含めている。 戦争カメラマン映画としては、「サルバドル」のほうが、知名度高い。「サルバ ドル」には明るさがあったからだろうか。「アンダー・ファイア」は、ラテンの ノリノリの明るい雰囲気が描かれながらも、映画全体が重く暗いところが戦争の 伝え方としてはなかなかいい。 この映画の制作は、1983年。

カトケンがニカラグアへ行ったのは、1988〜1989年。

1983年制作のこの映画の中で、登場してる人たちが将来予言しているセリフ のけっこう多くが当たってた。