宮脇氏の書いたものは90%くらいは読んでいると思う。単行本にならなかったもの、子供向けの絵本の一部を読んでいないくらいである。また、当方も宮脇氏の本に触発されて15年くらいかけてJR全線の完乗もした。さらに5年で、私鉄を含む国内のすべての旅客鉄道線に完乗した。特に鉄道マニアではない。単に旅行の一環である、また、宮脇氏の本には、自宅住所が記されているので、容易に当人にアクセスできるが、それもしなかった。距離を置いてリスペクトしていた。作家に直接関わるのではなく、作家と同じことをしてその功績を共感できたことで満足できたのだ。深入りは粋ではないとも思っていた。
この本では、容易に深入りすることができる。読まなくても良いかと思ったが、もう宮脇氏の新たな作品が世に出されることもないので、思い切って手にとってみた。そこには、鉄道路線の白地図に乗車区間を順次塗りつぶしていった「塗り地図」が掲載されていた。塗り地図については著作で説明していたので、おおむねどのようなものか想像はできていたが、ズバリ見せられるとさすがにその迫力はすさまじい。一目瞭然とはまさにこの瞬間である。当方も同じこと(完乗)をしていたので、自然に同じもの(塗り地図)を作成していた。完乗すれば、単なる鉄道路線図である。これだけを見せられても、一般の人はそんなに感動はしないだろう。しかし、乗車機会ごとに塗りつぶしていった経緯も共感できる当方には、これを見れば作者の性格までも読み取れる。
また、当方は本が好きで「本棚を見ればどんな人なのかわかる」と半分冗談で豪語しているが、この本には宮脇氏の書斎の写真も掲載されている。自著以外に参考にした本も多数並べられている。この本棚が、当方の本棚によく似ているのだ。地理や歴史の本、統計資料が多く、「一人でどこかに行くのが好き」「気になるところがあれば行って見てみたい」「気になることがあればきちんと調べたい人」の本棚である。鉄道マニアの本棚とは異なると思う。
パソコンは使っていなかったようだが、時代が少しずれていたら資料整理のために使っていたのではないだろうか。そうなれば当方の自室そのものである。 |