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「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」


(サマンサ 2006.7)

「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」

高校の英語の宿題で、ローリング・ストーンズの伝記の一部を訳した。ちょうど、ブライアン・ジョーンズが自宅のプールで溺死し、数日後に追悼コンサートが行われたことが書かれた章だった。そんなことを思い出しながら、「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」を観てきた。

今なお、ロック界の大御所として健在するローリング・ストーンズの駆け出し時代。バンドの創設者でリーダーだったブライアン・ジョーンズの死をめぐる話だ。1969年7月3日。自分が作ったバンドをクビになった直後に自宅プールで溺死するという、タイミング的にも死因的にも、「いかにも」な有名人の最期だ。事故死として処理されていながら、真相は闇の中。そして、周囲はちょっと怪しい人ばかりに見えて・・・。
映画は、サクサクと経緯を追って、ミステリーの真相(の一説)を解き明かすサスペンスものになっている。とはいえ、手に汗握る展開なわけではないので、それに、主人公のブライアンが、ブイブイ言わしてた部分はさらっと流してるので、ブライアン・ジョーンズって誰?という人には、ちょっと盛り上がりに欠けるかもしれない。60年代後半のファッションや初期ストーンズのナンバーが全編に散りばめられ、スタイリッシュでコンパクトな仕上がりなので、飽きる心配はないけど。

映画のブライアンは、わがまま勝手なだけのニーチャンだけど、昔のロックスターって、こんなイメージだったかも。はたして実態はどうだったのかな。映画に登場するミック・ジャガーやキース・リチャーズの儚いほどの初々しさを眺めていると、実はイメージが虚像を大きくしていただけなのかもしれないと思えてくる。サイコーのミュージシャンなのに人間として壊れてる大スターはほんの一握りだったのかも、と。その稀な一人がブライアンなんじゃないかな。本人は才能があるからこその、時代のスポットライトが自分から逸れたことへの焦りと苛立ちに自分の心が立ち向かえず、いたわってくれるギャルと薬と酒におぼれていってしまう。プライドだけは最後まで残ってる。そんな、ミュージシャンとして休眠状態の困ったチャンでも、振り回されている周囲が影響を受けてしまうのは、やはりカリスマ・オーラなんだね。結局、最後も溺れて人生の幕を閉じることになったが。

さて、映画の中ではブライアンの死に決着がついてスッキリなのだが、ほんとに怖いのは、ブライアンみたいなビミョーになってしまった存在が消されてしまうことが、さもありなんという状態だったと思われる当時の音楽界、という気がした。今だったら、殺されちゃったんじゃないかなどとウワサすら立たないんじゃないだろうか。そして、ストーンズがビートルズに対抗してワルな雰囲気で売り出す戦略じゃなかったら、その後、どんな道を辿っていたのだろう?