ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃なんとなく感想文

ハリウッドの懲りない面々


(森川 晃 2005.3)

「ハリウッドの懲りない面々」マックス桐島 講談社α文庫

 ハリウッド映画はいつごろからおもしろくなくなったのだろうか。子供のころ観ていたハリウッド映画は「大脱走」などの大作から、「猿の惑星」「イージーライダー」などのニューシネマへと移り変わる時期だった。邦画に比べて、新しいアイデア満載で新作が公開されるたびにわくわくしたものだ。すでに映画全盛期を過ぎて、映画館は閑散としていたが、やはりテレビとは異なる文化が残っていた。テレビは不特定多数の人に垂れ流すためいろいろな制限が加わるが、映画はある程度緩和されていたように思う。これは映画を作る側に良い意味で頑固な芸術家の気性が残っていたせいなのかもしれない。からくりは理解できなくても、小学生でもその差異は感じることができた。

 それから、気づいたら映画館には行かなくなってしまった。少なくとも1980年代以降は記憶がない。なぜだろうか。大人になってきたせいだろうか。しかし、今でも「大脱走」を観れば感動するし、冷静に非科学性を説明できるようになっても「猿の惑星」をすぐれた作品として観ることができる。

 駄作を連発する監督は、かつておもしろかったころの映画を観てきた世代である。それでもハリウッドシステムには勝てない。報酬が芸術を凌駕していることに少しは不満に思っているかもしれない。しかし、「スターウォーズ」「ターミネーター」を観て監督になる今後の世代には、不満さえ感じないだろう。このあたりで、芸術としての映画というエンタテイメントを葬るという選択も潔いかもしれない。