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「消えた百万人」− ドイツ人捕虜収容所、死のキャンプへの道 −


(加藤健二郎)

「消えた百万人」− ドイツ人捕虜収容所、死のキャンプへの道 − 
ジェームズ・バクー 光人社

 アメリカ式のチョー合理的な殺し方がよくわかる。アングロサクソン的な絶滅戦争の真髄ここにあり!

1945年、第2次世界大戦末期、米英側連合軍に投降したドイツ人約500 万人のうち、約100万人が収容所の中で死んだ。殺し方は、簡単である。立錐の 余地のないほどの捕虜を鉄条網の囲いの中に収容し、水も食料もほとんど与え ず、雨ざらし雪ざらしのまま放置しただけである。つまり、殺したわけではな い、死んでいったのだ。

 さすが、アメリカの殺し方は無駄がない。1941〜1945年のドイツ人の 全戦死者の数より、その後の数ヶ月間の収容所生活で死んでいっちゃったドイツ 人の数のほうが多いという。

 考えようによっては、拷問したりイジメたりして殺してゆくほうが、相手を人 間として見ているのかなというものを感じた。

 反米日本人の中には「アメリカは、同じ白人のドイツには原爆を使わず、日本 人が黄色人種だから原爆を落とした」と言う人がいる。でも、死んでいった命の 価値としては、飢えと病気で死んだ100万人のドイツ人よりも、原爆で死んだ 20万の黄色い日本人のほうが高いだろう。

 この資料が発掘されたのは、1986年のこと。 そして、こういう事実を書籍にして公表しようとしたのは、反米主義者でも人道 主義者でもなく、軍事マニアの老舗「光人社」だった。