ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

環状整備と交通分散1



【はじめに】

 都市部における道路整備計画にはさまざまなパターンがある。おおむね、周辺
の都 市と連絡する道路が都心に集まるかたちから始まる。都市の成長につれ
て、都心に集 中する交通を分散させるため放射道路同士をつなぐ補助道路を追
加していく。その先 は格子状にするケースと環状にするケースに分かれる。前
者はある程度広い平面に展 開する。後者は面の広がりをさまたげる地形(起
伏)や河川、港湾により市街が点在 するケースで、これらを短絡する最少リン
ク数である円状の道路配置になる。これに より分散のハンディを打ち消し、機
能面においては平面と同じ機能を果たすことがで きる。

 このあたりの表現はやや難解だが、地形の複雑な日本において、環状道路の整
備は 少ない投資で高い効果を発揮するということである。

◆図1
都心が拡大する都市において、格子状に整備される道路の概念図。

◆図2
都心と連続しない位置に市街が点在して拡大する都市において、環状に整備され
る道 路の概念図。
 さて、ここまでは都市計画の一般論である。実際には、重大な問題を抱えてい
るた め理想的なかたちでの道路整備はむつかしい。その問題とは、通過交通で
ある。一極 集中する都市はほとんど存在しないのだ。静岡市は東海道の大動脈
(東名高速、国道 1号など)は、市内を起終点とする交通をはるかに凌駕す
る。東西方向に通過する交 通の処理を基盤にしなければ都市計画は成立しな
い。仙台市、横浜市、千葉市、広島 市、福岡市、東京を除くすべての政令指定
都市は通過交通の処理を無視することはで きない。

 ところで、東京は巨大すぎて純然たる一極集中都市とは言えない。大田区か
ら足立区までの交通は都市内のリンクだが、都心部から見れば通過交通と同じ扱
いを しなければならない。

 つまり、都市計画はすべて例外であり、一般論だけで満足させることはできな
いの である。

【八戸】

 環状道路は前項で記したように点在する市街を最少リンクで連絡する合理的な
線形 である。しかし、都心をはさみ対角上の位置に行くには都心を大きく迂回
することに なる。このリンクは既存の放射道路を利用すれば最短距離になる。
それは成長した都 市の混雑を通り抜けることであり、時間はかかるかもしれな
い。また、このようなリ ンクを軽減させ少しでも都心の交通を分散させる環状
道路本来の目的を果たしていな い。

 それでも距離が長くなれば、迂回は敬遠したくなるのは当然である。これを解
消 させるには環状道路の高速化である。都心から遠い環状道路はなるべく高規
格化させ て高速で通過させれば時短への信頼が高まる。理想的には都心から同
心円の複数の環 状道路は任意の2本の放射道路の間における所要時間(円弧の
通過時間)が同じであ れば迂回のハンディは解消する。

 一般論はあくまでも概念である。概念を膨大な社会資本整備に適用するのは危
険で ある。道路は需要があって供給されるのが健全である。需要に都市の拡大
が合わせる かたちでは成功例はほとんど見られない。そこでケーススタディと
して理想に近い都 市を抽出してみる。

 まず、都市独自の道路計画が許されない、通過交通を基盤にする都市を除外し
なけ ればならない。通過交通の太い主軸は環状道路が都市の内内交通の分散で
はなく、外 外(通過)交通の主軸になってしまう。ある程度の規模があって、
通過交通への考慮 の少ない都市は、「端」にある都市が多い。函館、長崎、那
覇など。それらの都市の 中で、環状道路の整備が進み、都心の交通分散効果が
表れてきている青森県の八戸市 に着目した。

続く