都市高速道路は、高度に市街化された区域を縫うように計画される。そのため最も
適した位置への出入口の設置は難しい。それで、絶妙の位置からずらしたところに設
置せざるを得ない。首都高速道路の延長は273.9キロに達し、東京圏の要所には
当然適切な位置に出入口が設置してあるかと思いきや、案外肝心なところへは直結し
ていない。例えば渋谷の場合、渋谷地内のど真ん中を首都高速3号渋谷線が貫通して
いるが、都心方面は1キロ手前の高樹町R(ランプ)、東名高速方面は1キロ手前の
池尻Rを利用しなければならない。(渋谷Rは、都心方面と池尻方面、また東名高速
から高樹町方面を連絡する。)道路の構造上、渋谷署前交差点の直前に双方向連絡の
センターランプを設置することはできないが、おそらくこの位置が絶妙な位置であ
る。ところが、本当にここに、首都高速羽田線の羽田Rのような形式の出入口を設置
して良いのだろうか。高速出口から明治通り方面への右折交通の滞留による渋滞列は
高速本線の右車線を塞ぐことになるだろう。また、高速入口の料金所による渋滞列
は、明治通りだけでなく、青山通り、六本木通り、玉川通りの流れを著しく阻害する
原因になり得る。
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渋谷署前から六本木方面をのぞむ。
ここに首都高速の出入口があったら、
高速本線だけでなく、周辺の
一般道路は麻痺するだろう。
(1983年11月11日 著者撮影)
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古い地下鉄は、浅いだけでなくコンコースさえない構造がある。東京の銀座線のい
くつかの駅や、ニューヨークやパリの地下鉄では、乗車方向を間違えると一旦地上に
戻って、道路を横断して反対側から再度地下ホームに行かなければならない。間違え
なければ、1階分だけ垂直に移動するだけで地下鉄に乗車できる。ところが、新しい
地下鉄は長い通路を経てまずコンコースに降りて、さらに階下のホームに降りる構造
になっている。これには、混雑時に乗車待ちの人たちを滞留させる目的がある。都市
高速道路の出入口にも同じような効果を期待している。渋谷の場合は目的地の1キロ
手前で高速道路に連絡させることにより、渋谷の中心である渋谷署前交差点から1キ
ロの円内が目的地と見なされ、交通を分散させることができる。
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大阪なんば地区への 高速道路出口位置図。
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大阪のなんばも地内を阪神高速道路が縦横に走っているが、案外出入口は離れたと
ころにある。出口だけに絞ると、(1)道頓堀出口、(2)なんば出口、(3)湊町
出口(OCAT直結出口ではない※3)の3つが利用される。(2)は14号松原
線、(3)は15号堺線だけに利用されるが、(1)は11号池田線、12号守口
線、13号東大阪線、16号大阪港線など多くの路線から利用される。ところが、道
頓堀出口は、広い一般道路には直結していない。大阪市中央区島之内地内、道頓堀沿
いの隘路に接続している。ほとんどの出口交通は、そのまま高速道路高架下のくねく
ねした隘路を進行して、広い千日前通に至る。もちろん、伊丹空港直結の高速路線バ
スもこのルートをたどる。千日前通から、高速高架下を見ると大型バスが高い頻度で
遠慮がちに顔を出す様子を見ることができる。
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道頓堀出口から
千日前通までの隘路。
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※3 OCAT出口
湊町出口(15号堺線下り、環状線方面からの出口)には、OCAT(大阪シティ
エアターミナル)直結の出口がある。この出口は一般車両も通行できるが、なんばへ
の連絡ではなく、浪速区稲荷方面への連絡用と考えられるので考察対象から除外した。
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湊町出口(OCAT直結)
千日前通東行き車線から、
OCATビル侵入部分をのぞむ。
東京箱崎のTCATは、
首都高速箱崎JCTの下に
ターミナルビルが組み込まれているが、
OCATは、阪神高速本線の脇に別の
ターミナルビルを建てて、
高速出口がビルの階上に侵入する
形式になっている。
(2002年5月3日 著者撮影)
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OCATビル、地下1階広場から
湊町出口の侵入部分をのぞむ。
(2002年5月3日 著者撮影)
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名古屋高速も都心部の出入口は絶妙な位置には設置されていない。本報告では、名
駅入口での路線バスの迷走を一例としてあげたが、これは名古屋駅から名古屋空港に
向かう場合である。逆に空港から名古屋駅に向かう場合には全く異なるルートをたど
る。もちろん、絶妙な位置に高速出口はないので奇妙なルートをたどることになる。
今回はそれについては省略するが、別機会があれば紹介します。
都市高速道路は、首都高速、阪神高速、名古屋高速といずれも都心部では絶妙な位
置には出入口は設置していないと思う。ところが、福岡高速、北九州高速は要所に直
結しているような気がする。広島高速も同様に直結型で計画されている。直結型の場
合、開通当初に一般道路からのシフトが顕著である。また、短距離の部分開通時でも
利便性は高いので交通量は多かった。このあたりの視点でもいずれまとめたいと考え
ている。
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