ヒマヒマヒマヒマモード

Repeat

−−ある体温計フェチの日記−−


*脇腹に激痛を感じて目覚めるとコタツの中だった。
こだわって選んだウォーターベッドにはご無沙汰している。


左腕が硬直しているのは、体温計をはさんでいるせいだ。
また、熱を測っているうちにウトウトしてしまった。 朝日に水銀が閃く。
36.5度。僕には微熱だ。でも、今日は大事なプレゼンがある。

朦朧としたまま着替える自分を頭に描きながら、意識は途切れる。そして、 さっきと反対側の脇腹に痛みを覚えて我にかえる。が、夢から抜け出せない。 最初に激痛が走った方の脇腹に新たな痛みがやってきたとき、ようやく身体 が目覚めた。
昼前に会社にたどりつく。スケジュールを確認し、メールと、お約束の
Webサイトをチェックしてから、職場に溶け込む。
仕事に没頭しているうちに、電車の音が
聞こえなくなっていた。また、タクシー
だ。2回の乗換えがなくて済むから、ま
あいいか。


玄関をロックすると、まずTVとコタツ
のスイッチを入れてから着替えはじめる。
ダルいからお風呂はパスしよう。


コタツの定位置に収まって、3台のビデ
オの予約録画の結果を確認する。ビデオ 
を飛ばし見しながら、明日の資料にも目
を通す。
目がかすむ。ような気がする。ダルいのは、熱のせいか? 体温計を脇に入れる。
体温計はいつも手の届くところにある。 肌に触れたときのひんやりがたまらない。
デジタルのものにはイマイチ愛着が持てない。1秒間で計れる体温計のニュース
が流れていたが、僕には使えそうにない。
水銀計の、あの正しい角度で見たときに突然銀色の帯が現れてハッとさせられ
るところが好きだ。念入りに振って、34度より3mmくらい下を指していること
を何度も確かめてから脇へ持っていく。正しい位置を探ってしっかり固定する。


心持ち長めに計らないと、どうも安心できない。 それに、正確な計測のために
は安静にせねば。 座椅子の背を倒して、目を閉じる。


水銀の膨張する冷たい音に耳を澄ませる。至福の時。

そしていつも、
次の場面は、妻の足蹴りが知らせる朝の訪れである。脇腹は痣だらけだ。*
(*〜*:繰り返し)