通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼


緊急特集 紛争地域のインターネット事情(1)




アフガニスタン
先月、東長崎のサイトで流したが、YahooFranceによると、8月25日、アフガニスタン
のタリバン政権はアフガン内での「インターネット全面禁止令」を再公布した。7月
にタリバン政権は一般市民による電子メールを含むインターネットへのアクセスは禁
止したが、国連等の一部機関は例外として利用は認められていた。今回の禁止令の対
象はアフガン内の外国機関も含む。もう1つのアフガニスタン外との情報の伝達手段
である国際電話。これについては禁止されたという情報はない。

アフガンは長らく続いた戦争で、通信インフラがぼろぼろである。基本的な通信手段
は無線であり、電話回線の確保すら大変な状況。CIAによると、1995年時点の回線数
は推定31,000。それでもネットにアクセスできる環境に恵まれたユーザーは、隣接す
るパキスタンのサーバーよりインターネットに入るそうだ。アフガンにはいわゆる商
用プロバイダーという業者は存在しないようであるが、しかしインターネット通信シ
ステムはあり、機能している。タリバン政権用のメール・サーバー、DNSサーバー等
は政権基盤が強いアフガン南部に設置されていると言われている。政府関係者は自発
的にメールアカウントは開けなく、許可制となっている。

8月25日には8人の外国人がキリスト教を布教した疑いで政権に身柄を拘束された。西
洋的価値観の徹底的排除が国是となっているため、禁止されているのはインターネッ
トだけではなくて女性の就労、テレビ、音楽、お祭り、あらゆる娯楽にまで及ぶ。
1996年にタリバンが政権を取る前は、女性は社会に進出していた。現在、女性がつく
ことができる職業は診療に限られている。

今年、首都カブールを訪れたフランスの医療関係者によると、人々は貧困、そして終
わりが見えない戦争の二重苦にあえいでいる。絶望をした人たちは窓から身を投げ、
毒を飲み、焼身自殺は後を絶たない。社会はエイズ、麻薬、鬱、分裂症といった精神
病に汚染されている。エイズについては口にすることさえはばかれ、感染者は治療を
うけられなく放置されている。

参考:AFP通信、Yahoo France、Marie-Claire,MiddleEastWire.comより筆者が引用、
翻訳



パキスタン
アフガンでは、イスラムの価値観を守る特別な憲兵隊が不正アクセスを取り締るとさ
れる。コーランが書かれたころ、インターネットはなかったので、どういう罰則が適
応されるのかは不明である。パキスタンはアフガニスタンとインドに挟まれた、イス
ラム教を標榜する国だが、こちらではインターネットは合法であり、国上げて促進に
努めている。パキスタンの南のスーパーIT立国、インドが刺激となっている。

インドを常に過剰に意識しているパキスタンの人は、なにかと「わが国はいろいろな
面で世界に遅れを取っているが、でもインドよりまし、インドより進んでいる。」と
胸をはる。例えば対人口電話普及率。パキスタンは2.3%で300万回線。改善の余地は
あるが、インドはもっと低いそうだ。そう言いながら、インドに追いつこうと頑張っ
ている。

パキスタンに商用プロバイダーが出現したのは1996年のこと。5年間で25万人のユー
ザーを獲得した。2年前には29しかなかったアクセス・ポイントは432に増えた。ずい
ぶん広がったように思えるが、それでもユーザーの7割は主要都市のラホールかカラ
チに住むヤッピーである。また1アクセス・ポイントのキャパが低いため、1度に数
ユーザーしかアクセスできない。数10回モデムを鳴らしてやっと接続できる。その
上、電話会社が電話料金の計算を誤り、ばか高い請求書が来る。地獄のような猛暑の
中で、電話局に行き、辛抱強く並び、対応した職員ともめながらも通話記録を持って
こさせ、目の前で料金を計算させる。気が遠くなりそうだが、それでも25万人の人が
見たいものがインターネットにあるのだ。それは、どうやらポルノのようだ。
参考:www.dawn.com/ より抜粋、翻訳



レバノン
8月26日にイスラエルのF15、F16戦闘機はPLOの警察を爆撃した。PLOはそれに報復
し、イスラエルが報復する。パレスチナとイスラエルの国境は封鎖され、物資と人の
行き来は激減した。経済活動は停滞し、国連によると損失額は$67億に達する。そし
て今、パレスチナ自治区ではアメリカ同時テロを受けて歓喜がこだましている。

戦闘についての情報収集はパレスチナ人の生活には欠かせないが、その貴重な情報源
はラジオ、テレビからインターネットに変わりつつある。戦火を逃れてレバノンの難
民キャンプにきたパレスチナの若者は、チャットやメールでエルサレム、ヨルダン等
の同朋とやりとりする。携帯電話でおしゃべりする。一方、ハイテクになじめない年
長者は衛星テレビに見入る。

CIAによると、パレスチナ自治区内の電話回線数は95,000で3の商用プロバイダーが稼
動している。レバノンの通信インフラはより整っており、レバノンの難民キャンプで
暮らすパレスチナ人は、インターネットの恩恵を受けられる状況にある。加えてレバ
ノンは、中東の第2のITハブとして情報通信産業が急成長している。中東最大のITハ
ブはアラブ首相国連邦のドバイであるが、レバノンも有望株と見られていた。大手IT
企業の中で1999年にマイクロソフトが、2001年に入ってシスコがレバノンに進出し
た。コンピュータアソシエイツも2001年9月にベイルートに拠点を構える予定であっ
た。
参考:MiddleEastWire.com
(続く)