2001年12月22日、日本の海上保安庁は奄美諸島西300キロ沖の東シナ海で日本の排他
的経済水域(EEZ)で「不審船」を射撃し、沈没させた。当時、周辺には中国の漁船
が操業していた。
この事件は中国に対する威嚇行為と受けとめる中国人は少なくない。アメリカが中国
軍用機を撃墜させたように、日本が中国の漁船を誤爆していたら一体どうするつもり
なのだ。私もこう詰め寄られたことはある。不審船事件の真相はやぶの中で誰がどう
悪いのかわからないが、少なくとも海上保安庁は中国人に悪い印象を与えてしまっ
た。
日本にとって中国は一貿易国であるが、中国にとって日本は米国の同盟国である。こ
の意識に大きな隔たりがある。ほとんどの日本人にとって、北朝鮮を除けば万国は貿
易国。日本は日露戦争、日清戦争等、たくさんの戦争を戦ってきたが、戦後は自ら平
和国家と名乗り、過去を清算してしまった。一方、中国も阿片戦争から中国革命ま
で、たくさんの戦争を闘い抜いた。そして日本とは違うのは「中国是一個戦場」(中
国は1つの戦場である)と戦争意識を現実に引きずっているところである。だから中
国の一般市民にとって貿易国と米国の同盟国の意味するところが違うのだ。中国は海
峡を挟んで台湾、そして間接的に米軍と睨みあっているので、米国の同朋日本は商売
をして儲けさせてあげても、完全に気を許してはいけない相手である。不審船事件
は、その考えを念押す形になった。
当然のことだが、中国は日米安保をより強化させる有事立法に気をもんでいる。今の
ところ、日中友好団体が有事立法に反対する立場を鮮明にさせているが、トップの方
も臨時国会の日程が迫るなかで機会を持っては遺憾を表明し始めるだろう。8月に小
泉総理は中国訪問を延期した。かと思えば訪中延期表明の一週間後、台湾に行きた
がっていた政務官を辞任させ、唐突に中国の顔を立ててあげた。それは、中国と話を
したくはないが、日本批判の口実を安易に与えたくもない。有事立法成立を順調に運
びたい、という小泉政権の意思の現れではないか。
一方、中国には安保を「日本の軍事予算の節減効果をもたらし、日本は経済発展に集
中できた。」(帳国著、「中国新戦略」)と評価する論客もいる。中国も安保条約を
結んだらどうだろう。
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