活動通信アナリストの眼

携帯電話の番号持ち運び

 日本語として非常におかしな文節であるが、これは本日付けの日刊工業新聞に掲載さ
れた記事の題である。ギョウカイでは通称ナンバーポータビリティーで、契約先の通
信事業者を変えても継続して同じ電話番号を使える処置を指す。

欧州やアジアではナンバーポータビリティー導入済み。モバイルで世界をリードする
日本もまだまだ海外に学び、追いつかなければならないというところか。ともあれ、
ナンバーポータビリティーがどうしたかと言うと、これが日本でもできるよう、業界
と総務省が検討を始めてくれた。

ナンバーポータビリティーは停滞している携帯電話の新規加入を喚起してくれるとい
う期待があって、検討が今になって始まったのかと思う。J-Phoneの写メールやりた
いけれど、J-Phoneに新規加入すると番号変更しなきゃならないしこれが面倒くさ
い。かと言って携帯2台持ちたくないし、どいう人にはこのナンバーポータビリ
ティーが持ってこいという、はずである。はずである、というのは日本の人たちは携
帯機の買い替えでもって、番号変更にはそれほど抵抗をしなかった。電話番号を変更
してまでも、あの新しい機種がほしいという、欲望が面倒くささに勝っていた。だか
ら事業者もあえてお金をかけてでのナンバーポータビリティーの導入を面倒くさがっ
ていた。例外はナンバーポータビリティーの旗振り役で、これが常識、あってあたり
まえである欧州からきたVodafone(J-Phoneの親会社)である。
ナンバーポータビリティーがなくて一番困っていたのは、携帯一本で金儲けをする自
営業者ではなかろうか。仕事がらみとなると、番号変更はおっかなくてなかなかでき
ない。というところで、ナンバーポータビリティーはSOHO・法人市場の喚起に有効と
いう結論になる。そこで有利になってくるのは、自前でiModeというプラットフォー
ムを開発し、実証済みのプラットフォーム開発力があるDoCoMoである。先日、KDDIの
小野寺社長が日経とのインタビューで、DoCoMoのFOMAが不調でKDDIの新サービスが好
調である理由について、「あちらさんは何でも自前主義だからいけないのではない
の?」と言っていた。確かに自前主義だとコストはかかるが、開発方向が正しければ
お客さんはつき、そのコストは吸収される。

携帯メールの延滞をきっかけに、利用者は各事業者の技術を勝手格付けし、DoCoMoは
常に信頼性が高いと高く評価されている。その評価は、情報セキュリティが大きな問
題である法人向け市場に有利に働く。このままいけば、ナンバーポータビリティー解
禁でDoCoMo再び一人勝ちであるが、さあ、KDDIとJ-Phoneはどう出るか。