活動通信アナリストの眼


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




でもITで景気は回復する
IT不況…そしていずれはシステム障害という形で我々を再び逆襲する恐れがある、
なんて高いところから偉そうなことを言ってみたけれど、同時に私はITが日本の景
気を救うとも、わかりきった顔をして言っている。

昨年の今ごろ、私はソフトバンクグループ会社の幹部にインターネットの可能性はま
すます広がると説いていた。彼らは私の見方を一蹴した。ブロードバンド時代を切り
開いていっているはずの彼らは、インターネットはメール交換の手段で、通信と放送
が融合して、ユーザは映画をパソコン上で見るようになるでしょうね、ぐらいの展望
しか描いていなかった。もちろん、私も態度だけは強気で、何も確証は持っていな
かった。ソフトバンクの方々の考え方では、パソコンのOSの立ち上がりが遅い、
ケータイも限界があって今以上の進化はないんじゃないの。私はそれに対し、弱弱し
く「ケータイを見てもわかるように、ITに取り付かれたユーザは進化していく。そ
のうち皆プログラミングができるようになる。」と反論した。

プログラミング普及については見誤っていたし、笑われても仕方がなかった。しかし
OSなぞ問題にしないユーザは予想以上に積極的にインターネットを生活に取り入れ
ていった。例えばインターネットを検索してその日の食事の献立を考える女性。献立
のカロリーをサイトで調べ、摂取栄養素の計算をし、栄養が標準摂取量に満たなかっ
たらサプルメントを調合するそうだ。すごい。彼女は全然意識していないが、これは
既に一つのプログラムである。
dim myCalorie As Object, CalorieTotal as Integer 
Range(“a1”).CurrentRegion.Select
For Each myCalorie In Selection.Areas
CalorieTotal= 。。。

今私は危ない手つきでVBAプログラミングでカロリー計算プログラムを書こうとして
いる。さらに食品加工業者がサイトで商品のカロリーと栄養素の明細をXML言語で記
述するようになれば、彼女はクリック1つで情報収集と分析ができるようになるだろ
う。

800億円の赤字を計上したソフトバンク。私はソフトバンクの「凋落」に私自身の転
落を重ね合わせている。ITバブルを煽った「アナリスト」とかベンチャーの旗手は
ITの可能性を実は過少評価していた。つまり、メールとかネット閲覧とかチャット
がIT革命と考えており、ITの深遠を全然見ていなかったのである。その結果、ブ
ロードバンド時代の入り口にきて躓いた。ソフトバンクについてわかりきったことを
言う資格は小生にはないが、昨年の会談のみで考えれば私も彼らも進化していく技
術、進化していくユーザの姿を捕らえていなく、何もわかっていなかった。ユーザは
通信と放送の融合とか多様化とかいう薄っぺらで高級な言葉の概念を越え、自分用の
アプリケーションを意識することなく作り出していたのである。