活動通信アナリストの眼


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




IT不況の足音
嫌なことは重なるものだ。相次ぐ航空機墜落事故にそして金融機関のシステム障害。
これこそが本格的なIT不況の始まりかと思うと背筋が寒くなってくる。「選択」とい
う雑誌が怖い記事を掲載した。みずほグループにて度重なるシステム障害が顧客のみ
ずほ離れを促し、金融不安を煽り、日本は底なしの恐慌へ突入。みずほ発の信用不安
が日本沈没を引導する可能性が指摘されている。

信用パニックの可能性もあろうかと思うが、ITの現場からは違う意味でのIT不況が眼
に浮かぶ。私が抱く妄想は、システム障害が生産、流通、サービスというあらゆる現
場で起き、そして経済麻痺である。別に私はそれを望んでいるわけではない。私はテ
ロリストではないけれど、情報システム予算を削るという後ろ向きな話が多いこのご
ろ、悪いことを連想してしまう。日本では人件費が高いので、外国にアプリ開発を発
注したいという要望も強い。1日2000円、1000円の単価でこれが可能か。この価格破
壊への甘い夢が、インドITブームを起こしている。
システム障害は「規制に守られて管理が甘い大銀行」にだけではなく、いつでも、ど
こでも、誰にでも起こりえる。そもそも<を<=としたミスでシステムを止めたとか
いう武勇伝はどの会社のマシン室にも転がっているものだ。プログラマはたくさんの
エラーを出し、たくさんのミスをして脱皮していく。また、そもそもプログラムを書
いているのは人間だ。結婚、恋愛は千差万別でどれ1つ同じ男女物語がないと同様、
似た企業用プログラム仕様はあっても、瓜二つというのはない。それでも完璧な完成
品は当たり前とされ(私もシステムによる迷惑を被りたくない)、そしてプログラマ
は大変な思いをしてそれを達成している。営業マンも大変だ。発注企業は「みずほの
ようなことになると困るんだな。」と思い切り開発業者を揺さぶって値切る。

ゆとりが失われつつある今日、完璧なシステム創りの環境が崩れはじめている。消費
者の無理な要求は携帯電話をはじめとするIT技術を成長させ、成長期時SE・プログ
ラマは忙殺されながら嬉しい悲鳴をあげていた。しかし消費者の突き上げが、報われ
ない達成課題となり、そしていずれはシステム障害という形で我々を再び逆襲する恐
れがある。