通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




テロ時代の通信業界 2)
11月24日付けの朝日新聞にアフガンの通信事情についての記事が掲載された。現在、
行政機能不全のカブールの電話局には8人の交換機技師が勤務している。機械は最近
導入された中国製の交換機である。カブール市内では約3万の電話回線が稼動してい
るとのことである。以上の点について分析をしてみる。

カブールの電話局では8人の交換機技師が対応していて、現状では人手不足とのこと
だが、これは1シフトで8人なのか、それともカブールでオペレーションをしている技
師が全体で8人しかいないということなのか。緊急事態下、人はより必要とされる。
1シフト8人体制でも、彼等は家に帰れているのだろうか。もし状況はさらにもっと
厳しくて、局全体で8人の技術スタッフしか抱えていないのなら私が向こうに行って
サポートに入ろう。そうすれば9人で3人づつで朝、昼、夜の交代勤務シフトが組め
る。家に帰れなくても眠れるだろう。
アフガニスタンの電話局では中国製の交換機を使用しているとのことだが、その製造
元の駐在事務所はカブールにあるのだろうか心配だ。今後、大きいところでは地方行
政の仕切り直しによって市外局番(東京03等)が変更することがあるかもしれない
し、収益改善のために料金前払い制にしたり、また日々の業務では料金を支払わない
利用者の電話番号を無効にするといったことで、交換機をいじることが平時より多く
なってくる。機械がうまく動かなくなった場合の中国のサポートが期待できればいい
が。

カブール、カンダハルといったタリバンの重点支配地域においての各種設備の損傷は
激しいそうだが、影響が少なかった地域もあり、アフガン全土が戦火につつまれて通
話不能に陥ったわけではないようだ。いずれにせよ、回線復旧工事や回線増設に伴う
資金は、国際機関の大型資金援助でもないかぎり、カブールで3万という数少ない利
用者から徴収することになる。どれだけ低く見積もっても50万回線敷設分の最低25億
円の調達には1利用者あたり約75,000円の負担増となる。料金値上げ、特に国際通話
の料金値上げは不可避であろうが、果たして値上げだけで必要とされる資金が調達で
きるだろうか。
(続く)