通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




10月25日 中国人民解放軍 改革派意見書
2001年6月、香港の大陸情報誌「前口肖」は中国人民解放軍の三総部軍官が書いた
「中国軍改革派意見書」を当誌に掲載した。意見書は、人民解放軍はいかなる党派組
織に従属せず、人民と国家の利益に服従すべきであると述べ、軍事行動は人民の議会
の承認を得ることが必要と提案。日本では自衛隊の海外派兵にあたり、国会の承認の
是非が論議になったが、この意見書では軍が人民の利益に背かないよう、議会の承認
による歯止めは必須と訴える。この意見書はインターネットでも一般公開された。

「前口肖」誌によると、意見書の筆者は海外に留学した経験をもち、西洋の近代国家
の制度について詳しい者だという。国権の遂行機関は議会であるべきという結論にい
たった筆者の思想の根底には西欧の民主主義制度を中国にも取り入れようという思い
が流れているとされる。中国共産党による一党支配を真っ向から否定しているのであ
る。
この意見書が明るみになった後、中央軍委員会の副主席は、人民解放軍は江沢民国家
主席と思想、政治、そして行動の面において一致し、軍は江沢民の党中央指揮に従
い、中国は独特の社会主義路線を堅持していくことを強調した。6月6日付けの「解
放軍報」紙は国防大学政治工作研究室による、意見書の批判論文を掲載した。西側の
反対勢力が人民解放軍の「脱党、脱政治」を吹聴しているが、これは軍は党の絶対指
導下にあるという、政治の本色を変えようとする試みであると強く批判した。

人民解放軍が内部の批判分子を「西側の敵対勢力」と断罪している中国は、イスラム
過激派を国内に抱えながらも、「アフガニスタンの民間人の犠牲」を楯に決してアメ
リカと足並みを揃えることはないであろう。私は国際政治の素人であるが、中国は独
自のイスラム原理主義勢力に対する戦いをしていく思うのである。イスラム教徒が人
口の4割を占めるといわれている中国のShinKiang省ウルグイ地区の情勢を注意深く
見守っていく必要があると思う。