10月15日 空爆初日のユナイテッド航空837便 II |
客から見れば、UA837便の3時間半の飛行は通常と変わりなかった。乗客はあくまで も客として扱われ、乗務員は常ににこやかだった。しかしいつもと微妙に違う機内ア ナウンスは、航空会社が提供する役務の中核が、客の好みにかなった機内飲料・食事 サービス、プレゼント攻勢、マイレージ等各種ボーナス得点から、無事故な飛行に変 わりつつある兆しは感じられた。 離陸前の非常口、救命具等についての説明時には、乗客一人一人の責任において、注 意してよく聴くよう促された。航空機の型によって、構造は違うのでよく回りを確認 すること。そして救命用具の所在を確認し、見つからなければスチュワーデスに即言 うこと。また、乗客には「安全な飛行」のためにある一定の協力を求められるように なることも念を押された。緊急事態においては、乗務員の指示は「お願い」から「命 令」になり、客の甘えは認められなくなってくるであろう。 |
乗客には様々な犠牲が強いられるようになる。出発、到着の遅れ、そしてその逆。私 の香港行きのフライトは2時間遅れ、帰りの便の出発時間は10分繰り上がった。フラ イト・スケジュールの大幅な変更。サンフランシスコに飛ぶはずだったのにロンドン に着いていたということなんかありうるのではないか。香港滞在中、上海の空港で原 因不明な異変が起きた。名古屋でもいたずら電話による混乱があった。これからは空 港の閉鎖で予想外の地に飛んでいたなんてことも。 私と同じ列に座り、バッグに閉まったパスポートから日本人とお見受けする中年の女 性は中国語らしい本を読んでいた。この人すごいな、一見普通のブランドマニアの主 婦だけど、実は中国語ペラペラなんだな。何の本を読んでいるのだろうかと覗いてみ たら、彼女が手にしていたのはお経だった。客も緊張しているのだ。 ユナイテッド航空は全世界の利用客に対してアンケート調査を行なった上で、様々な 顧客戦略を生み出したいとしている。しかし喫煙家の要望を却下し、「機内完全禁煙 化」をやりきったユナイテッド航空のことである。もはや顧客の都合が全てという 「マーケティングの常識」にとらわれないで様々な英断(?)を下していくであろ う。そして他の航空会社もそれに習っていくのかもしれない。 |