通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼


番外編

緊急分析 9月10日米国のテロ
米国の金融街が爆風に襲われた。このテロ行為により、世界貿易センタービルに入居
していた企業内に設置されてあったサーバ等のネットワークシステムは全壊した模様
である。

しかし、これは企業情報資産の全壊、ましてや金融街の崩壊を意味しない。世界貿易
センタービルに事務所を構える規模の会社であれば、企業ライフラインたる情報デー
タベースは人の出入りが多いオフィスには置かない。データセンター(IDC)と言われ
る専用施設にサーバーを置くケースが多く、そしてそのデータセンターの在り処は外
部には公開されない。従い、世界貿易センタービルが崩壊したとしても、別の拠点で
業務を再開することはできる。犠牲となった多くの企業が、情報資産を守る措置を
とっていたことを願って止まない。
企業の中で特に金融機関はセキュリティーに過敏である。当然ながらデータのバック
アップを定期的に取っている。コンピュータシステムの設置場所を選ぶにあたって、
ビルの耐震構造、耐火構造、交通の便等を考慮に入れるのが一般企業。私の知る例で
は、某銀行は地下断層を調べていた。阪神大震災の際、金融機関のコンピュータシス
テムの損害は最小限に食い止められたと日本ユニシスは報告しているが、それこそ平
事が万事で日ごろの管理が災害時に明暗を分けるということであろう。

証券取引場、空港等は閉鎖されたが、場所を選ばなく、サイバースペースで取引がで
きるインターネットの底力がこれから発揮される。システムが動かなくても、企業の
役員の自宅にある個人用Windows98マシンをサーバーにしてしまえばいい。

今回の事件で、データを守るバックアップの重要性がより強く認識されるであろう。

データ管理そしてシステム管理のあり方も見直されるだろう。日本の企業はサーバを
大手町にあるデータセンターに置きたがる。サーバの設置場所はどこでもいいはずな
のに、顧客に吹聴したいのか、企業は大手町ブランドには弱い。しかし、政治経済の
中枢拠点にサーバーを置く必要はまったくない。また、データセンター事業者の中で
も、池袋サンシャインのような高層ビルで運営している業者は苦しくなる。阪神大震
災でも指摘されていたが、システムがビルの最上階にあれば点検に行けなく、復旧が
遅れる。そしてこれも阪神大震災のときと同様であるが、解約が続いている企業専用
線(ある拠点と拠点を専用の通信回線で結ぶ)のメリットが見直されるであろう。