通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




9月3日
関西電力が、パソコンの電源を入れるだけでインターネットにつながるネットワーク
システムを来年春に商用化する見込みだそうだ。
9月1日付けの朝日新聞がスクープした。 これはすごい。つまり、インターネット・アクセスに電話線やケーブルが不要とな る。電気コードに付着しているモデムが、電圧コンバーターのような働きをし、適当 にビット/ワット変換。そして電柱に敷設している光ファイバーにビットを流し、イ ンターネットにつながるという仕組みだそうだ。NTTの電話線がなくても、無線が入 らなくても、既存の電気さえあればネットにつながってしまう。 朝日の記事によると、関電の「電流インターネット」の商用展開は2002年から。とい うことは2003年に本格稼動、と読む。こういうビット/ワット変換モデムって、まだ 量産はされていないと思うが、2002年、つまりあと半年で大量生産環境は整うだろう か。モデムはいくらするのか検討はつかないが、1ユニット30万円?100万円?それ を5000円までにコストダウンできるだろうか。
ずばり、私はこの「電気でインターネット」は家庭向きだと思う。新技術に対応した
企業ネットワーク商品が市場に出ていないからである。だから家計に負担がかからな
い程度でサービス・インが可能でなければならなく、モデムは5000円以下でなければ
ならない。5000円では開発コストが回収できないので難しい?

冷蔵庫とかトースターとかオーブンとか、その他電力を消費しそうな家電にモデムを
搭載して、グレードの高い家電として売るという手がある。もっと展望がありそうな
のは、遠隔医療機器。あるメーカーはトイレの尿の成分を解析して医療機関に送るシ
ステムを考案している。試作品では電話線を便器につけて使っていたが、髭剃り機の
プラグに電源を差し込めるように改良すればすぐ使えるだろう。

関西電力の取り組みを聞いて、ブロードバンドの話題はすっかり色あせてしまった。
関西電力にはモデムのコスト、企業ネットワーク対応、以外にファイバー敷設コスト
負担といった頭痛い課題はあるが、技術は画期的であることにはまちがいない。一
方、ブロードバンド事業者は頑張って、ADSL、ケーブル、光ファイバーの加入者を獲
得し、電力会社のサービスが立ち上がったころには「もうインターネットはたくさ
ん。うちはもう結構ですよ。」という状態に持っていくように頑張るだろう。