通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




7月29日
富士通と日本電気の業績が悪化しているとのことである。来年3月期の業績見通
しを下方修正した。これについて日経新聞に証券系アナリストの分析が載ってい
た。消費が芳しくなく、携帯電話機やパソコンといった「消費財」が低迷し、業
績回復の足を引っ張るという見方である。異論はない。1円の携帯電話機が売れ
ないわけだし。
将来は絶望的で真っ暗か。でも2002年3月期に見込まれる損失というのはあく
までも見込みである。
富士通、NEC内にはいずれ「物」では稼げなくなる時代が来ると予見していた幹
部が少なからずいた。彼等は「メーカー」から「サービス・プロバイダー」への
脱皮という構造改革を提言していた。BiglobeやNiftyといったインターネットプ
ロバイダー業に力を入れ、CATV高速インターネット接続プロバイダー等に積極的
に出資した。さらに独自のコンテンツを持つソニーを目指そうという声もあった。
芳しくない営業成績・見通しを前にして、会社に対しての前向きな評価は「こじ
つけ」と言われるかもしれない。私は雇われではなく、勝手アナリストなので何
でも言える。だから言う。世の中はWEB中心に動いていく。WEBサービスの重要性
は高まり、我々は買い物から住民票公布から選挙まで、WEB上で処理するように
なる。細々とした機材の「メーカー」から細々とした「サービス・プロバイダ
ー」への脱皮という構造改革の方向は正しい。全体の業績見通しは暗いけれど、
1990年代半場から進められてきた構造改革は評価したいと思う。そういった路線
を取らなかったメーカーはあるのである。
例えば世界一の情報通信機器メーカーである仏アルカテル社である。1999年秋
に、私はアルカテルの社長会見で、日本のメーカーが取っている路線について意
見を求めた。社長は、サービス・プロバイダーはアルカテルのお客様であり、お
客様と競争することは企業としてまちがった考えだ、と否定した。今日、日本の
メーカーと同じく業績不振に見舞われているアルカテルは、不採算部門をばっさ
ばっさ廃業して立ち直ろうとしている。