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陸上自衛隊の新型戦闘車、陰影物語




2004年以降、陸上自衛隊が、「欲しい欲しい」と熱望しているのが、
この105ミリ砲搭載、8輪戦闘輪装甲車。
(朝雲新聞、2008年3月13日号)

この戦闘装甲車の売りは、指揮ネットワークの中枢としての指揮統制機能、装輪
(タイヤ)による機動性である。そのため、技術開発の会議等では、105ミリ
砲の搭載に反対論が強かった。105ミリ砲を搭載することによって、本来目的
である指揮統制機能、機動力、兵員輸送力などが奪われるからである。

すると、自衛隊側からは、非公式コメントだが、
「戦車不要論が圧倒的な中、指揮統制機能、機動力という言葉を掲げて、なんと
かして、105ミリ砲搭載の戦車モドキを残したい、というのが、陸自機甲科の
願望なのです」と。

つまり、不要な105ミリ砲についての議論をなんとか避けて、指揮統制機能、
機動力という部分だけに着眼させて、この新型戦車モドキを欲しいのだ。
敵戦車を撃破するには、105ミリではなく、120ミリ砲の時代であり、陸上
自衛隊では、90式戦車が120ミリ砲を搭載している。90式戦車の後継新戦
車も、2008年2月から外観だけ公開されている。そんな中、105ミリなん
て、中途半端をいまさら新規装備として・・。

しかも、イラク戦争でも、米軍によるイラク軍戦車撃破は、120ミリ砲による
ものより、対戦車ミサイルによるもののほうが数は圧倒的に上だったのであり、
戦車の大砲で戦車を撃破なんて、戦車屋の古き懐かしきロマンでしかない
一方で、陸上自衛隊は、105ミリ砲搭載の74式戦車を順次、廃棄処分にして
いる。
ここは、戦車の墓場といわれるところで、このような戦車残骸が姿をさらしてい
るのが、現在の陸上自衛隊の現状である。

つまり、自衛隊は、せっかく国民の税金で買ってもらった74式戦車を使いこな
すことができず、タイヤ式にした105ミリ砲搭載の戦車モドキを欲しがってい
るのだ。新型戦闘装甲車は、廃棄されつつある74式に比べて、攻撃力、防御
力、不整地機動力、障害突破力などで劣ることになる。

指揮統制機能については、新型戦闘装甲車の狭いスペースに積める機材であれ
ば、より大型の74式戦車には搭載できる。しかし、古い車体を流用という方法
を、自衛隊はあまり好まず、なんとかして新規装備を欲しい。自衛官にかぎら
ず、日本人は新しいもん好きだ。

105ミリ砲を搭載しないのであれば、新型装甲車は、指揮統制車としての使い
勝手は良いだろう。
しかし、105ミリ砲を搭載しないと、陸自戦車乗りたちのロマンを満たせない。
陸自ロマンチストたちにとっては105ミリ砲が載ってないと意味がない。

舗装道路上の長距離走行では、装軌(キャタピラ)車はダメで、装輪(タイヤ)
が必要という見方もあったが、2003年3月20日に始まった米軍によるバグ
ダッドへの600キロメートル以上の進撃作戦では、M1A1エイブラム戦車、
M2ブラッドレー戦闘装甲車、LVTP7A水陸両用強襲車などの装軌(キャタ
ピラ)車が、舗装道路上も不整地上も大進撃を完遂している。

つまり、装軌×装輪、論争は、2003年以降大きく変わったのだ。